2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mass Transport Phenmena in Thin Polyelectrolyte Films under Device Operating Conditions
Project/Area Number |
26410224
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川口 大輔 九州大学, 分子システムデバイス国際リーダー教育センター, 准教授 (70362267)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薄膜 / 界面 / 高分子電解質 / 固体高分子形燃料電池 / 水 / 拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
異種固体界面における高分子鎖の凝集状態や熱運動特性は、バルクとは大きく異なることが知られている。界面に特異的な分子鎖の振る舞いは高分子複合材料やエネルギーデバイスなどの機能特性と密接に関わっていることが予想される。本研究では、固体高分子形燃料電池のプロトン交換膜としても使用されている代表的な高分子電解質であるナフィオンを用いて、その薄膜の凝集状態おおよびプロトン伝導特性を評価し、温度、湿度、界面など、薄膜周囲の“場”の効果が担体の拡散に及ぼす影響を明らかにすることを目指す。 ナフィオン薄膜はスピンコーティング法に基づき石英基板上に調製した。平衡膨潤状態におけるナフィオン薄膜の凝集状態とプロトン伝導度を温度の関数として評価した。中性子反射率測定に基づき、基板界面近傍には、厚さ5 nm程度の多層構造が形成されていることが明らかとなった。また、温度可変中性子反射率測定により、界面層とバルク層の膨潤度を評価した。バルク層の膨潤度は温度とともに増加し、333Kより高温ではその傾きが増加した。一方、界面層の膨潤度はバルクのそれよりも低く、かつ、温度に依存せずほぼ一定であった。これは、ナフィオンと石英の相互作用が強いことを示唆している。 基板に対して平行および垂直方向のプロトン伝導度を交流インピーダンス測定に基づき評価し、中性子反射率測定の結果と組合せることで、界面層におけるプロトン伝導度を評価した。その結果、石英基板上に調製したナフィオン薄膜の界面では、基板に対して平行な多層の水和構造が形成され、異方的なプロトン伝導が発現することが明らかとなった。また、プロトン伝導度は低温域では温度上昇にともない緩やかに増加したが、333 Kより高温では急激に増加した。これは、温度上昇による膨潤度の変化、および、高感度反射赤外吸収分光測定に基づき評価した水の凝集状態の変化ともよく対応した。
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