2014 Fiscal Year Research-status Report
使用済みフッ化黒鉛一次電池を用いた新規電気化学キャパシタの構築
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26410250
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
白石 壮志 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40292627)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フッ化黒鉛 / リチウム / 電池 / キャパシタ |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ化黒鉛リチウム電池は高エネルギー密度・長期信頼性を有し、ガスメーター・時計・浮きなどの電源として広く使われている。フッ化黒鉛リチウム電池は一次電池であるためこれまでは使い捨てされてきたが、研究代表者は完全放電して残存容量がなくなったフッ化黒鉛リチウム一次電池は電気化学キャパシタとして再生できることを数年前に見出した。本研究では、使用済みフッ化黒鉛リチウム一次電池を充電することでキャパシタとして再生した蓄電デバイス(フッ化黒鉛リチウムキャパシタ)の基礎特性を把握し、充放電機構を明らかにするとともに、欠点であるサイクル特性の改善とエネルギー密度の更なる向上を目指す。本年度は、フッ化黒鉛リチウムキャパシタの充放電機構の解明とサイクル特性の改善について以下の基礎的検討を行った。 まず、基礎特性としての体積エネルギー密度・出力密度・自己放電特性を評価したところ、フッ化黒鉛リチウムキャパシタは、従来の電気化学キャパシタである電気二重層キャパシタ(EDLC)と比べて優れた自己放電特性ならびに高い体積エネルギー密度・出力密度を示すことが分かった。 さらに、充放電サイクルによるキャパシタ特性の低下を、黒鉛とLi 金属からなる二層構造化負極を採用することで大幅に改善することができた。また、充放電前後の正極の分析結果から、フッ化黒鉛リチウムキャパシタの正極の充放電には、リチウムイオンの挿入/脱離も関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度においては以下の基礎的検討を行い、当初の予想を上回る結果を得ることができた。 ①充放電機構の解明について フッ化黒鉛リチウムキャパシタでは、フッ化黒鉛リチウム電池の正極放電生成物であるフッ化リチウムと炭素のナノコンポジットに電解質アニオンが可逆な電気化学的挿入・脱離することで正極の充放電が行われると推測されている。本年度は当初の計画通り、X線回折測定(XRD)・ラマン分光測定の二種類の方法で充放電機構の解析を試みた。さらに当初計画にはなかった充放電中における電極の厚み変化の追跡を行った。その結果、フッ化黒鉛リチウムキャパシタの正極では充放電に伴う膨張収縮が顕著でなく、電極の結晶構造には大きな変化がないことが示唆された。また、充放電による電極内部組成変化をX線蛍光分析(XRF)ならびにICP発光分析装置を用いた調べた結果、電解質アニオンだけでなくリチウムイオンも充放電に伴って電極に挿入脱離される化学種であることが判明した。両者の分析結果を総合すると、正極では当初の予想とは異なり、リチウムイオンが積極的に充放電反応に寄与する機構によって機能することが明らかになった。 ②サイクル特性の改善について 本研究では、負極をリチウム金属と黒鉛の二層構造化することで、充放電中にリチウム黒鉛層間化合物(Li-GIC)を生成させ、Li-GICが実質的な負極活物質として機能することによるサイクル特性改善を行う。本年度では、サイクル特性の改善効果の基礎的データを修得した。具体的には、負極を約30μmのリチウム金属と黒鉛薄層との二層構造化した結果、200サイクルでの容量維持率がこれまで10%以下であったものが、既に約70%にまで改善できた。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな研究手法を導入することで初年度に得られた成果をさらに発展させる。 ①充放電機構の解明について 次年度から、電極の重量変化をその場観察できる電気化学的水晶振動子マイクロバランス法(EQCM)を用いて、フッ化黒鉛リチウムキャパシタの正極の電気化学的挙動を解析し、前年度までの成果と合わせて充放電機構の考察を行う。 ②サイクル特性の改善ならびにエネルギー密度の向上について 初年度において検討したリチウム金属と黒鉛との二層構造負極について、黒鉛層の厚みならびにかさ密度を最適化することで、優れたサイクル特性を維持しつつ体積エネルギー密度の向上を狙う。
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Causes of Carryover |
本年度に支出予定していた試薬・ガス類の消耗品の購入費について、見込みよりわずかに下回ったため。なお、研究遂行には支障は全くない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額3964円については、当初の研究計画での次年度物品費50万円と合わせて研究に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)