2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420009
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 賢治 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30154537)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 残留応力 / X線応力測定 / 2次元検出器 / 粗大粒 / cosα法 / 直接法 |
Outline of Annual Research Achievements |
粗大粒を持つ部材として平均粒径50μmのオーステナイト系ステンレス(SUS316L)を選定した.本試料に対して垂直入射したX線により回折斑点を測定した.特性X線はMn-Kαを利用した.コリメータ(径1mm,照射域径2mm)から試験片に垂直にX線を照射し,γ-Feの311回折を利用してイメージングプレート(IP)により回折斑点を得た.回折中心およびIPの姿勢は試験片に塗布したタングステン(W)粉末の220回折環で補正した. 粗大粒からの回折を2次元で検出すると回折斑点を特徴とする回折パターンであった.それらをcosα法で応力評価すると回折斑点のばらつきで十分な精度でX線が得られなかった.細粒で適用できるcosαが,粗大粒に対して適用できない原因は,斑点のために180度の対となる回折角が得られない場合があること,回折角度そのものが大きく変動することがわかった. cosαに対応できるように対となる回折角を得るために曲線近似による補完法を用いてcosα法を試みた.この改良には一定の効果があるものの,根本的解決するには至らなかった.他方,粗大粒に対応して斑点から回折角を直接求め,応力値を求める「直接法」を新たに提案した.回折角(ひずみ)から応力の最適値を計算する手法としてNelder-Mead法を用いた.細粒(ピーニング面)では,直接法がcosα法よりも優れた結果を得ることができ,直接法の有効性についても検証できた.また,回折角が大きくばらつく現象については,回折中心と各結晶粒の位置が異なるため,その幾何学的差が,ひずみのオーダーよりも大きいことがわかった.回折角度のばらつきを低減する手法を見つけることが課題となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施計画では,試料の準備,IP による測定,IP の補正と回折中心の決定,回折斑点の抽出法,応力成分の決定,直接法の解析プログラム完成を達成することを予定していた.本課題においては,これらのことをすべて達成しているので,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
「直接法」では粗大粒においては回折中心と各結晶粒の中心が一致しないことが原因であることもおおよそ見当がついてきた.そこで27年度以降は,回折中心と回折斑点中心を一致させるべく「π法」を新たに提案する.このことは本申請書でも謳っているところである.回転中心と照射域中心を一致させるための手法も検討する余地があり,その精度向上も課題の一つである. そのために回転できる負荷治具を設計製作すること,その治具の回転中心とX線照射域中心を一致させ真の回折中心を実現できるように試料台ステージなどの装置を完成させる.また,その一方で.「π法」に対応した解析プログラムを完成させる.これらの装置と解析方法の完成した後,既知の負荷をSUS316Lの試験片に負荷して,既知の応力を「π法」で測定し,その有効性について実際に検証することを中心に研究を推進する.また,これらの成果を学会等で発表する. 「π法」により改善できない場合については,ここの原因を整理して解決法を加え改良することで,従来困難と言われていた粗大粒,溶接部のX線応力測定を構築する予定である.また,2次元手法について粗大粒,溶接部問題を解決するための2次元検出器の活用と課題について,産業界と研究機関の共同による共同研究を進めており,その成果をとりまとめ,研究の推進に役立てることも検討している.
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Causes of Carryover |
購入予定の物品の金額が予定よりも定額のために,少額(357円)の残額が生じた.研究遂行に関わる次年度の継続もあるので,次年度に有効に活用すことが,適正な使用と判断した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費として活用する.
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