2016 Fiscal Year Research-status Report
切削に匹敵する大切込みと目詰まり防止を特徴とする超硬研削用カップ型砥石の開発
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26420051
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤原 貴典 岡山大学, 研究推進産学官連携機構, 教授 (20274011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 一仁 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10223918)
塚本 眞也 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80163773) [Withdrawn]
大西 孝 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90630830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 正面研削 / ダイヤモンド電着砥石 / 超硬 / 研削抵抗分布 / 研削抵抗 / 切りくず付着 / 高能率研削 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,従来型のR付き電着ダイヤモンド砥石を用いて超硬を正面研削する際の研削抵抗分布ピーク発生位置,砥石作用面への工作物由来の付着物生成について実験的に検討した。 まず,小切込み時(設定砥石切込み量50ミクロン)での研削抵抗分布のピーク位置であるが,砥石外周のR部と,内周の直角角部を用いて研削したところ,R部では角部から底面フラット部にさしかかる箇所から0.38~0.50mm,砥粒2~3個程度の領域でピーク値が発生していることが分かった(使用砥粒平均径#80=177ミクロン)。これに対して直角角部では0.31~0.36mm,砥粒1~2個程度の領域でピーク値が発生していた。本来のピン角形状であれば,角部でピーク値が発生するはずだが,電着砥石はエッジ部の砥粒分布が粗なため,このようになったと推定される。砥石の研削領域の位置に対して,中央部でピーク発生位置が干渉部に近く,砥石の両側では遠くなる。仕上げ面粗さは,砥石中央部で研削した場合に最も粗くなりRz=1.22ミクロンであったが,砥石両側部では砥粒の干渉長さが長くなることとアヤメ模様が発生することから平均でRz=0.93ミクロンと良好であった。 つぎに,従来型砥石の砥石中央部を用いて大切込みを付与して性能を確認した。設定砥石切込み量を30,100,200,500ミクロンで研削した場合,100ミクロン以上では定常研削状態が発現しなかった。そこで砥石作用面をSEM・EPMA分析したところ,切込み量が増大すると砥粒摩耗とともに砥石外周に切りくずの付着が増大した。EDXによる切りくず由来のW,Coの質量割合は(Δ=30ミクロン)1.02<2.24<6.08<7.55(Δ=500ミクロン)であり,漸増している。また,研削抵抗分布のピーク値発生領域の砥石作用面は,砥粒の摩耗が多くみられた。ピーク値は砥石のR部側に発生することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度には使用する工作機械の主軸電動機および主軸軸受けの交換で9ヶ月のロスタイムが生まれ,平成28年度には研究代表者の病気による延べ7ヶ月の病気休業で,研究の進捗に寄与できなかった。この間は,研究分担者が学生の指導を行って研究業務を継続したが,研究がスローダウンしてしまった感がある。そこで科研期間を1年延長して頂いた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,(1)砥石半径方向に幅広く研削抵抗分布が作用するように工夫し,粒度の異なる2種類の砥粒を混合メッキした砥石を新たに試作して,十分なチップポケットを構成することで目詰まりを防止した上で,目標は設定砥石切込み量Δ=1.5mm,送り速度200mm/min,加工能率Z'=5mm3/mm・sで正常な研削状態を発現させることにある。この加工能率は鋼材を研削加工する場合の生産現場の能率に近い値であり,超硬では極めて高能率な加工を実現することになる。この条件で加工を行い,砥石作用面が工作物との干渉領域で有効に作用しているのかを研削抵抗分布の監視で明らかにし,仕上げ面粗さおよび切込み量,各種切残し量を解析する。研削抵抗分布を勘案しながら,砥粒の摩耗が著しく進行しない限界抵抗を明らかにして,加工条件の最適化を進める。 さらに,(2)前年度やり残した,砥石送り速度と研削抵抗分布のピーク幅との関係を,従来型砥石と新型砥石で比較する。従来型砥石でも砥石作用面を有効に使用するための知見と同時に,砥石摩耗が急速に進展する砥石抵抗の閾値が明らかになるものと考えている。 また,(3)砥石外周部に砥石と一体に設けたフランジを測定ターゲットとして,主軸頭に固定した3個の渦電流式変位センサで研削途中の砥石の姿勢変化を観測して,これまで不明確であった低い工具支持系剛性における工具の挙動変化を明確にする。このことによって、工作物への干渉直後に砥石が垂直なままで切込み方向に押し上げられるか,砥石送り速度方向に傾斜を持つのかが明らかになり,加工精度向上に資するデータが得られる。 最後に,(4)ピン角砥石を用いた場合の研削抵抗分布の様態を明らかにするため,ビトリファイド砥石を用いて,これまで経験的に言われてきた,直角コーナーの砥石が工作物に切込む際の研削抵抗分布ピーク値が砥石端部で生じることを実験的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型砥石について,平成28年度よりメーカと打ち合わせているが,粒度の異なる2種類の砥粒を均一に分散メッキすることが意外に困難で,何度か試作していただいているものの,5月2日時点で未だ満足すべき結果が得られていない。したがって,この作業が遅れている。 また,先にも述べたとおり,研究代表者の病気休業など研究進捗が困難な状況が続いていたために,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度からメーカと打ち合わせている新型砥石の納品待ち状態で,納品が有り次第代金を支出する。その他に,学会発表のための出張旅費,間接経費を予定している。不足分は大学研究予算で充当する。
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