2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ流体沸騰伝熱の工業利用に向けた熱伝達率の動的変化とナノ粒子層剥離の現象解明
Project/Area Number |
26420140
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
大川 富雄 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20314362)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 沸騰熱伝達 / ナノ流体 / 熱伝達率 / 限界熱流束 / ナノ粒子材質 / ナノ粒子濃度 / ナノ粒子分散状況 / 飽和プール沸騰 |
Outline of Annual Research Achievements |
飽和プール沸騰体系で、水ベースのナノ流体の熱伝達特性について系統的に実験を実施した。主な実験パラメーターは、ナノ粒子の材質(二酸化チタン、アルミナ、シリカ)、濃度(0.04-1kg/m3)、分散状況の3つであり、(1)一定熱流束下における熱伝達率の時間変化、(2)熱伝達率(沸騰曲線)、(3)限界熱流束に及ぼす影響を調べた。この結果、ナノ流体中におけるナノ粒子の分散状況が沸騰熱伝達特性に及ぼす影響は、明確には認められなかった。しかしながら、ナノ粒子の材質と濃度の影響は顕著であった。まず、熱伝達率の時間変化については、(1)単調かつ漸近的な増加、(2)単調かつ漸近的な減少、(3)増加およびその後の漸近的な減少、(4)減少およびその後の漸近的な増加の4種類が観察された。次に、沸騰曲線は、アルミナとシリカに比して、二酸化チタンでは複雑な変化を生じること、限界熱流束が高い値をとる場合、壁面過熱度の顕著な上昇が生じることがわかった。最後に、限界熱流束は、いずれのナノ流体においても純水中よりも高い値を示した。ただし、低濃度ではCHF向上率は比較的小さいのに対し、高粒子濃度のシリカナノ流体では、特に高い値を示した。なお、二酸化チタン粒子を積層した伝熱面を純水中に配置して沸騰曲線を作成したところ、ナノ流体中で見られた壁面過熱度の複雑な変化が消失するとともに、実験後にナノ粒子層の部分的なはく離が認められた。これより、ナノ流体中では、伝熱面上へのナノ粒子の付着と離脱が同時に生じており、両者のバランスによって平衡状態における熱伝達特性が決定されるものと考えられることを示した。これより、平衡状態における伝熱面過熱度が、粒子濃度によって大きく変化する機構に説明を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ流体の飽和核沸騰において、熱伝達率が複雑に時間変化する原因について実験的に検討し、伝熱面上へのナノ粒子の付着とナノ粒子層の部分的はく離のバランスによって伝熱面の表面性状が時間変化することが大きな要因となっていることを示した。この他、ナノ粒子の材質、濃度、分散状況が沸騰熱伝達特性に及ぼす影響について系統的な知見を得た。これより、当初の目的を概ね予定通りの進捗で達成していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度に実施した実験により、ナノ粒子層のはく離現象は、当初に想定していた限界熱流束の他、粒子付着速度とのバランスを通して、平衡状態における伝熱面の表面性状と核沸騰熱伝達率にも多大な影響を及ぼすことを示した。したがって、ナノ粒子層の強靭さは限界熱流束と核沸騰熱伝達率の両面で重要であることから、当初計画に従い、ナノ粒子層の強靭さについて実験的に検討する。
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Research Products
(2 results)