2014 Fiscal Year Research-status Report
人の手の機能理解に基づいた多様な把持を可能とするロボットハンドの開発
Project/Area Number |
26420198
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横小路 泰義 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30202394)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロボットハンド / 筋骨格モデル / 物体把持 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.人の手の把持動作の計測と把持戦略の理解 様々な物体に対する人の把持戦略を整理・理解するために,Amazon Picking Challengeで対象としている物体と同様のものを25種類用意し,把持戦略を観察するとともにデータグローブで動作を計測した.小さな物体に対する「つまみ動作」,比較的大きな物体に対する「つかみ動作」以外に,本などの薄いものを持ち上げる際に,まず物体の一部を持ち上げ,指を物体の下に差し込んでから持ち上げる複合動作を行っていることが明らかになり,これを「引き上げ把持動作」として考察の対象に加えることとした. 2.筋骨格モデルに基づく手の機能の運動学的解析 把持戦略としては大きく「つまみ動作」,「つかみ動作」,「引き上げ把持動作」の3つに分類できることが分かったので,これら3つの動作の代表的なものに対し,示指の筋骨格モデルにより,深指屈筋,指伸筋,骨間筋,虫様筋の4つの筋肉の伸縮量を求め,どの筋が支配的に働いているかを解析した.まず「つまみ動作」では骨間筋がほとんど変化しておらず,MCP関節とPIP関節を連動させた動作であることが分かった.次に「つかみ動作」では指が物体に接触するまでは「つまみ動作」と同様に各関節を連動させて指を閉じていき,指が物体に接触した後はDIP関節のみが屈曲するなじみ動作となっていた.最後に「引き上げ把持動作」においては,「つまみ動作」と同様にMCP関節とPIP関節が連動するフェーズがあることに加え,虫様筋が大きく伸展,収縮するこの動作に特徴的なフェーズがあることが分かった. 3.筋骨格モデルに基づく手の機能の静力学的解析 筋張力と指先力との静力学的な関係から,力学的観点での各筋の役割の解析を試み,虫様筋などの内在筋が指先力の方向の調節に効果的に働くことを見出した.これらより,骨間筋や虫様筋といった内在筋の働きがある程度明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1.人の手の把持動作の計測と把持戦略の理解」では,Amazon Picking Challengeで対象としている物体と同様のものを対象としたことで,本などの薄いものを持ち上げる際に用いる「引き上げ把持動作」が基本動作として必要であることを見出した. 「2.筋骨格モデルに基づく手の機能の運動学的解析」では,筋骨格モデルを用いた解析により,新たに見出した「引き上げ把持動作」において,特に虫様筋の活動が顕著な動作フェーズが含まれていることが分かり,今後様々な物体を把持できるハンドの設計において重要な指針を与えることとなった. 「3.筋骨格モデルに基づく手の機能の静力学的解析」では,静力学的な観点からも虫様筋や骨間筋などの内在筋の機能を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,「つまみ動作(ピンチング)」と「つかみ動作(包み込み把持)」が可能なハンドの設計をする予定としていたが,今回新たに「引き上げ把持動作」が必要であることが分かったので,これを含む3つの基本動作が可能なハンドを設計していく予定である.また母指を含む筋骨格モデルを構築し,より詳細な動作解析も行う予定である.
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