2014 Fiscal Year Research-status Report
携帯型レーザピーニング装置開発のための疲労強度向上効果確認実験
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26420468
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
崎野 良比呂 近畿大学, 工学部, 准教授 (80273712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣畑 幹人 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50565140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザピーニング / 疲労 / 残留応力 / 溶接 / 大型試験体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、小型化が著しいQ スイッチYAG レーザの使用を前提とした、今までにない「携帯型レーザピーニング装置」を実用化するため、低パルスエネルギーでの最適な施工条件が溶接部でも適用可能か否かを明らかにする。さらに疲労強度向上効果を定量的に明らかにする。 本研究によって携帯型レーザピーニング装置の開発に必要なデータが得られ、実際の装置の開発に着手することが可能となる。携帯型レーザピーニング装置を用いる事ができれば、高所・狭隘部にも容易に適用でき、工場のみならず現場でも容易に用いることができる疲労強度向上手法となる。 本年度は、レーザピーニング(以下LPと称す)のピークエネルギーを既往の研究よりさらに小さな10mJとし、照射径と照射密度を変化させて高張力鋼に施工した。その後に、X線による残留応力の測定と電解研磨を繰りかえすことにより、その残留応力分布を明らかにした。この結果から、最も大きく深い残留応力を生成した条件を選定した。さらに、選定した条件で溶接部にも大きく深い残留応力が生成されることを溶接部の残留応力測定によって明らかにした。この選定したLP施工条件での疲労強度向上効果を確かめるため、突合せ溶接部に同様の条件でLPを施し、LPの有無による疲労強度を比較した。その結果、突合せ溶接試験体ではこれまでの200mJおよび20mJと同等の疲労強度向上効果を有することが確かめられた。これにより小型低出力レーザの使用を前提としたLPの施工条件を確定することが出来た。 LPのモデル化に関しては、LPの影響を板表面の強制変位にモデル化した残留応力解析を行い、LPの残留応力分布の特徴である、生成した残留応力の異方性が本モデルによって表現できることを明らかにした。 さらに、疲労試験前後の残留応力分布の変化および、曲げジグの開発とそれを用いた曲げと引張での疲労寿命の比較についても研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究協力者をプロジェクトマネージャーとして昨年9月より開始された革新的研究開発推進プログラム「ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿社会の実現」において、超小型マイクロチップレーザーの高出力化(>20mJ、<1kg)を目的とした研究が開始されている。このプログラムによって小型低出力レーザが開発された後にすぐ本研究に適用することが出来る様に、研究のスピードを加速している。 26年度実施予定のレーザピーニング施工条件の確定と小型突合せ試験体による効果の確認は実験計画の変更はあったものの全て達成し、その効果が既往の研究と同等であることを明らかにした。 レーザピーニングのモデル化に関しても、当初の予定通り、モデルの構築と解析を行い、既往の研究結果との比較を行った。まだ課題はあるものの、残留応力の異方性等の定性的な傾向は表現できることが分かってきた。 これに加え、27年度実施予定の大型試験体による曲げ疲労試験をより効率的に研究代表者の所属機関で行うための曲げジグの開発および、曲げ疲労試験と引張疲労試験の疲労寿命の比較を行った。これにより、27年度の研究がスムーズかつ効率的に実施できる環境を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は大型曲げ疲労試験体による疲労強度向上効果の定量的把握を行う。26年度に用いた小型試験体の疲労試験では容易に多くの試験体を実験できるためパラメトリックな相対比較には有効であるが、疲労強度が実際の部材より大きく評価されてしまう。そのため定量的な効果の把握はできない。そこで、確定した施工条件を使用して定量的な評価が可能な大型曲げ試験体を用いた疲労試験により、効果の確認と疲労強度の定量的把握を行う。試験体として、長さ500mm,幅150mm,板厚15mmの鋼板にリブを回し溶接した大型曲げ試験体を用いる。試験には研究代表者の所属機関が所有する100kN疲労試験機と26年度に開発した曲げジグを用いる。大型試験体の設計およびパイロット試験はすでに26年度に終わらせている。また、この大型疲労試験体の曲げによる疲労寿命と、これまで実施してきた引張疲労試験での疲労寿命の比較も26年度実施しているので、27年度の結果とこれまでの研究との比較も可能であると考える。 レーザピーニング後の溶接部の残留応力分布が解析できれば、効果的な施工法(レーザの条件,施工位置,施工順序等)が予め検討できる。そこで、レーザピーニングのモデル化では、さらに定量的に残留応力を再現できるモデルの検討と施工前に残留応力が存在する溶接部でのモデル化を検討する。これにより、溶接による残留応力を考慮してもLPの残留応力生成が予測できるモデルの構築を目指す。
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