2014 Fiscal Year Research-status Report
GPS地殻変位データの時間発展を考慮した津波波源のリアルタイム予測
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26420493
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
泉宮 尊司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60151429)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 津波波源 / インバージョン / 地殻変位 / GNSS / 断層モデル / 精度評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新潟地震発生当時の地殻の観測結果を用いて,断層変位の逆推定を行っている.既存の提案されている断層モデルを基本として,すべり量を算定し,地殻変位量の観測結果との整合性を検討している.さらに,ひずみ集中帯である日本海東縁部において,佐渡の沖合に仮想の断層を設定し,地殻変位データから津波波源のインバージョンを行うことで,地震断層と観測地点との位置関係が,インバージョンの精度に与える影響を定量的に評価している.その結果,仮想断層を用いた津波波源のインバージョンでは,陸上の観測地点のみを観測データとして用いた場合では,観測誤差が小さい場合でも逆推定の精度は低かった.同時に,観測誤差の増加により誤差も飛躍的に増加することが明らかになった.さらに,観測地点の断層幅Wで基準化した相対距離の値が小さい観測地点の観測データを用いることで,すべり量分布と地殻変位量の両方において,観測誤差が増加しても推定誤差を小さく留める効果があることが分かった. 地殻変位データを用いて逆解析をリアルタイムで行う際には,断層の走向,傾斜角およびすべり角が詳細には不明な場合が多い.このような場合でも断層逆解析が精度よく行えるように,地殻変位データの誤差に関する対数尤度と各種パラメタの関数であるABIC規準を用いて,より正確な断層の走向,傾斜角およびすべり角が推定できるかを数値シミュレーションにより検証した.その結果,断層諸元の1つのパラメタのみを変化させて逆推定する場合には,走向および傾斜角が10°程度以内の誤差で推定できることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実測の地殻変位データを用いて,津波波源域のインバージョンを行い,既存の断層モデルと比較することができた.また,佐渡沖合の海底に断層を想定し,地殻変位データをノイズ成分を付加して作成し,逆解析に用いてインバージョンの精度の検証がなされた.このことにより,断層幅と同程度の距離の地殻変位データが存在すると,推定精度の低下を防ぐことができるという重要な成果が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
地震断層の形状に関するパラメタは,断層長さ,断層幅,走向,傾斜角,すべり角,およびすべり量である.今年度は,これらのパラメタのうち走向および傾斜角が変化する場合の最適な解を算定する手法を開発する.さらに,断層変位の時間発展に関するパラメタとして,断層破壊速度および立ち上がり時間が関係するため,これらの要素を変化させて地殻変位波形および変位速度波形を算定し,そのデータを地震断層逆回析に用いることで,精度の検証を今年度以降に行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初,GNSS受信機一式・Leica GR10と (株)HPCテック社製ワークステーション一式を購入予定であったが,予算が削減されたこととソフトが予想外に高価であることが判明したため,サーボ型速度計と安価なノートパソコンを購入することにしたためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した予算は,地盤振動等に影響を与える風速を同時計測するために,3D超音波風速計を購入することにした.この風速計のデータにより,地殻変位データのノイズ成分の有無と除去に役立てることができる.
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