2014 Fiscal Year Research-status Report
公共図書館と大学図書館での「ゆるやかな機能連携」と「場」の階層性認知に関する研究
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26420628
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
中井 孝幸 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (10252339)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公共図書館 / 大学図書館 / 場 / 機能連携 / 複合 / 図書館像 / 階層性 / 役割 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は公共図書館としては、ホールや体育館などと複合している愛知県田原市中央図書館、ホールや生涯学習施設、高校と複合している駅前立地の富山県高岡市立中央図書館においてアンケート調査と巡回プロット調査を行った。大学図書館では、ラーニングコモンズ(以下LC)を1年以内に改修した椙山女学園大学図書館と愛知学院大学図書館、愛知県内では初期にLCを導入した名古屋学院大学図書館において、アンケート調査と巡回プロット調査を行った。 東日本大震災で津波被害が甚大であった宮城県の東松島市図書館と気仙沼図書館において平日と休日に来館者アンケート調査を行った。また、砺波市立図書館では親子で考える理想の図書館をテーマにした模型作りのワークショップ(以下WS)を開催した。 公共図書館は複合施設の図書館について過去の調査結果(塩尻市立館、一宮市立中央)も含めて、図書館のみの利用者と図書館以外の施設利用者との分析を行った。複合している機能や図書館内外の学習室、駅前立地の影響により利用者属性の構成割合が大きく変動している状況が整理された。 大学図書館は、過去の調査も含めた9館分のデータから、図書館が提供している様々なサービスに応じて、利用者の図書館での学習活動が異なってくることが整理された。また、新たにLCが設けられた2館で、LCの設置前と設置後の学習環境に対する意識の変化を考察することで、個人での勉強やグループでの学習にも様々な状況が見られ、座席の選択行動から学習環境としての「場」に6つほどの段階性があることが整理できた。 被災地での過去の調査(名取市図書館、南三陸町図書館)も含めて図書館利用からは、休日と平日であまり大きな利用差がなく、浸水域に居住していた利用者ほど利用頻度も高いことなどが整理された。子どもとのWSでは、よく図書館を利用している児童ほど他の機能を複合させる傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公共図書館における複合形態は、各館でさまざまであり、利用行動や利用意識、図書館像といったものは様々な要因が複雑に絡み合っているので、機能連携と図書館像についてはもう少し研究を進める必要がある。 一方、大学図書館では、利用者層が「学生」に限定されているため、学習環境として何を求めているのかが整理しやすいと考えられる。ラーニングコモンズの設置前後の状況を調査したことにより、学生が大学図書館に求めている学習環境には個人利用からグループ利用まで様々な段階性があり、「場」としての階層性認知の様子を具体的に整理できたことは、研究を進めていくうえで大きな進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
大学図書館で整理できた、学習環境としての「場」の段階性をさらに考察を続け、「場」の形成過程を明らかにしていきたい。 また、図書館単体だけではなく、複合施設として、または広い地域の都市的なスケールでの「場」の選択利用として、公共図書館や東日本大震災の被災地の利用状況から整理していきたい。 公共図書館での機能連携では、組み合わせが多いため、少し機能を絞り込みながら、立地や利用動向を見据えて調査対象を設定し、利用者が図書館に求める「場」としての機能を整理していきたい。
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Causes of Carryover |
研究の継続性の観点から、年度ごとに調査対象を変更していくのではなく、毎年度ごとに複合建築の公共図書館、ラーニングコモンズが整備された大学図書館、東日本大震災の被災図書館での来館者アンケート調査や行動観察調査、図書館に関するワークショップを行うことにした。そこで、当初の予定より調査対象館が増え、調査補助やアンケートの集計・分析作業などの謝金が増えることが予想されたので、作業環境の狭隘さもあってパソコンなどの物品費を抑え、次年度以降の調査補助や集計作業への謝金などに回そうと考えたため、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の作業環境が変わったので、昨年度整備できなかったパソコンなどの物品の購入を行い、複合建築の公共図書館、ラーニングコモンズが整備された大学図書館、東日本大震災の被災図書館での来館者アンケート調査や行動観察調査、図書館に関するワークショップなどの開催を行う予定である。様々な調査やワークショップを通じて、多角的な視点から利用者が求めている「場」としての図書館像を整理していきたい。
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Research Products
(7 results)