2014 Fiscal Year Research-status Report
2011年東日本大震災被害を受けた歴史的建造物の修理修復に関する研究
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26420644
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
泉田 英雄 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70203057)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 2011年東日本大震災 / 文化財建造物 / 修理活用 / 土蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ.対象地域の文化財建造物に関して,各市町村の史誌及び文化財修理報告書から過去の震災・津波被害と修理の整理を行った。申請者が修理工事監修指導を行った石巻市指定文化財「天雄寺観音堂」は,ワールドモニュメント財団の資金助成を受けて2015年3月に竣工し,5月に落慶式を行う予定である。土地の嵩上げなどで再建用地が決まらないものを除いて,天雄寺観音堂を含む各指定文化財建造物の修理はほぼ終了していることを確認した。 Ⅱ.何の指定を受けていない被災木造建築には明治時代のものも多数あり,それらのリスト作りを行い,教育委員会と協力して所有者に修理を働きかけていきたい。宮城県の北部(北上川下流域)には板倉建築が多く,被災したものは震災後2年でほぼ解体撤去されてしまった。岩手県南部(北上川中流域)からは土蔵が圧倒的に多くなり,被災した土蔵の修理はほとんど手が付けられていない。これらは地域の大事な文化遺産であり,地域創世とあわせて修理活用の方策を関係機関及び所有者と協議していくことになっている。現在,岩手県旧江刺市と住田町で試みを行っている。 Ⅲ.木軸モルタル壁建築の修理活用は大きな課題であり,石巻市の「観慶丸」に関して東京大学腰原幹雄先生と一緒に修理活用調査研究委員会委員を務めており,この構法の被害診断と修理活用の方法について相談していく予定である。地方都市にはこの構法による商店建物はとても多く,修理活用のマニュアル作りは急務である。 Ⅳ.具体的修理に関わっているものとして,石巻市指定文化財「旧ハリストス正教会聖堂」があり,これは再建位置が決定したので,復原実施設計のための調査を実施している。気仙沼市内湾地区の6棟の登録文化財の内,防潮堤建設と区画整理地からはずれる「小野健商店土蔵」は申請者の監修指導による2014年6月に竣工した。他のものについては,地元建築事務所と協力体制を作り上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年大震災から4年経ち,重要文化財と地方自治体指定文化財建造物の緊急修理は適切な修理体制と資金で終わり,やっと登録文化財に修理の手が入り始めた。これらの監修指導に関わりつつ,大学院生とともに被害地や構造物の特徴を分析している。塩竃石や野蒜石を使った石蔵,稲井石を使った基礎,雄勝スレートや登米スレートを使った屋根葺き,気仙大工による木造建築について特に注目している。
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Strategy for Future Research Activity |
文化財建造物の修理監修指導に関わりつつ,何の指定を受けていない歴史的建造物について,関係機関(市町村の教育委員会や地域創世を担っている企画財政課など)と所有者と協力し合い,修理と活用のマニュアル作りを進めていきたい。
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Causes of Carryover |
記憶媒体を購入して,収支決済をゼロにすべきところ,3月下旬に出張がかさなり叶いませんでした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査過程においてデジタルカメラのデータの保存のために良質な記憶媒体を購入します。
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Research Products
(5 results)