2014 Fiscal Year Research-status Report
製糖業における工場と社宅街の建設が台湾の都市開発に与えた影響に関する研究
Project/Area Number |
26420647
|
Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (40326492)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 / 台湾 / 植民地 / 社宅街 / 日本史 / アーカイブズ / 空中写真 / 地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,戦前期すなわち日本統治期に,台湾で建設された44ヵ所全ての製糖工場と社宅街を対象として,製糖工場と社宅街の建設とその後が,周囲の街や集落に与えた影響を明らかにすることを目的に研究を進めている。平成26年度は,具体的には以下のように研究を進めた。 平成26年9月に台湾を訪問した。中央研究院のほか,国立台湾図書館,国家図書館などを訪問して製糖業に関係する資料を収集した。また,渓湖糖廠,旧烏日糖廠,台北糖廠跡,宜蘭製糖所跡を対象に現地調査を行った。さらに,台南市に所在する善化糖廠内の善糖文物館で,同館が所蔵する資料の一部についてデジタルアーカイブズ化の打ち合わせを行った。ここでは,同館と中央研究院の研究者との関係構築に協力することができた。 また,平成27年3月にも台湾を再訪した。南瀛国際人文社会科学研究中心,国立台湾図書館,国家図書館などを訪問して製糖業に関係する資料を収集し,中央研究院の研究者と打ち合わせを行った。南瀛国際人文社会科学研究中心では,これまで報告されていなかった史料の詳細な内容を把握することができた。また,新営糖廠と宜蘭製糖所跡を対象に現地調査を行った。その結果,台湾側でも情報が完備されていなかった,44ヵ所の全ての製糖工場の位置を正確に同定することができた。なお,これらの調査を中心に,研究の具体的な様子をブログ「居住環境学科な日々」で紹介した。 国内での資料の掘り起こしでは,平成26年12月に東京大学経済学図書館と公益財団法人交流協会の図書室を訪問して資料を閲覧したほか,他の研究者との情報交換を行い,これまでに収集した資料の整理なども行った。 これまでの研究成果の整理では,台湾の事例との比較を行う上で重要な,戦前期に日本の影響下にあった他の地域を対象とした製糖工場と社宅街に関する成果(今回は樺太と沖縄を対象として)を発表することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は,平成26年度には,①台湾で現在所蔵されている空中写真のうち,第二次世界大戦中以降1960年代頃までに撮影された,製糖工場と社宅街が写り込んだ空中写真を体系的に収集すること,②明治・大正期から現在に至るまでの地図を対象として,工場と社宅街周辺の集落や街が記載されたものを体系的に収集すること,③それらを用いて,空中写真と地図を用いたハンドブックの作成を作成すること,を計画していた。 このうち,①と②については概ね達成でき,残りは補足調査を行えば良い状況となったが,③については現在進行中であるため,「やや遅れている」と評価した。 その原因としては,44ヵ所の全ての製糖工場と社宅街を対象として研究を進めていることから,扱うべき情報量が膨大で,当初の見込みより大幅に時間がかかってしまったことがあげられる。これまで,製糖工場が1ヵ所であった樺太,4ヵ所の北海道,同じく4ヵ所の沖縄などについても研究を実施したが,これらの地域とは比較にならないほどの情報量の多さである。ある程度は想像はしていたものの,予想を上回る作業量であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは,「11.現在までの達成度」の欄でも作業が遅れていると述べた「空中写真と地図を用いたハンドブックの作成」に全力を注ぐ。この作業は,今後の研究を推進するための基礎資料でもあるからである。少なくとも,平成27年度の前半には完成を目指したい。 一方,当初の研究計画では,平成27年度には,①台湾における郷土史や地域史に関する資料をできる限り体系的に収集すること,②前年度の補足調査を行うこと,③台湾の製糖業に関係する記述があると考えられる戦書や米軍関係資料を収集すること,④国内での資料の掘り起こしを行うこと,を実施する予定であった。これらの項目も,平成27年度の後半以降に鋭意取り組んで行きたい。なお,①については,既に平成26年度にも一部を実施できているので,平成27年度末には,当初予定していた項目の研究を全体として実施できるものと期待している。 さらに,平成28年度は,これまで収集してきた資料/史料を基に考察を進め,研究の取りまとめを行う。これは,本研究の申請時に既に計画していたことだが,これまでに科研費を頂いて実施した研究では,計画の最終年度にも多くの調査を予定したために,取りまとめが不十分となってしまった反省がある。そこで今回は,不測の事態への対応の意味を持たせて,補足・追加調査を行うにとどめ,新たな内容の調査は予定せず,考察と研究尾まとめに専念する予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の計画から変わった点は,次の通りである。 日本建築学会九州支部研究発表会が研究代表者の所属機関で開催されたため,旅費のうちの成果発表用国内旅費は使用しなかった。また,台湾での現地調査時には,諸般の事情から調査補助者(研究協力者)に謝金を支払うことができず,無償で調査補助をお願いすることになったため,謝金を使用しなかった。さらに,ハンドブックの作成に遅れが出たため,「その他」のうちの印刷費は使用しなかった。一方で,収集してきた様々なデータの重要性を考えれば,データのバックアップは厳重に行う必要があるなどの理由から物品費がかさんだ。しかし,これらを差し引きしても10万円弱が次年度に繰り越しとなったため,次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の使用計画は,以下のように予定している。合計998千円(当初計画額:900千円,前年度未使用額:98千円)。 消耗品費268千円(図書・各種資料/史料(台湾の地方史・区域史関連)100千円,図書・各種資料/史料(製糖業関連関連)50千円,図書・各種資料/史料(戦書や米軍側史資料関連)50千円,一般文具(ファイル・筆記具・記録メディア・トナーなど)68千円)。国内旅費140千円(資料収集東京方面70千円,研究成果発表70千円)。外国旅費350千円(現地調査台湾方面(夏季,2週間)200千円,現地調査台湾方面(春季,1週間)150千円)。人件費・謝金147千円(現地調査補助98千円,資料整理補助49千円)。その他93千円(台湾からの資料の郵送料20千円,複写費23千円,ハンドブック印刷50千円)。
|
Research Products
(2 results)