2015 Fiscal Year Research-status Report
製糖業における工場と社宅街の建設が台湾の都市開発に与えた影響に関する研究
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26420647
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 台湾 / 植民地 / 社宅街 / 日本史 / アーカイブズ / 空中写真 / 地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,戦前期すなわち日本統治期に,台湾で建設された44ヵ所全ての製糖工場と社宅街を対象として,製糖工場と社宅街の建設とその後が,周囲の街や集落に与えた影響を明らかにすることを目的に研究を進めている。平成27年度は,具体的には以下のように研究を進めた。 平成27年9月に台湾を訪問した。高雄市立歴史博物館,高雄市立図書館総館,嘉義県立図書館,中央研究院,国家図書館,国立台湾図書館などを訪問して製糖業に関係する資料や郷土史や地域史に関係する文献などを収集した。また,蒜頭糖廠,旧岸内糖廠,南靖糖廠,麻豆糖廠を対象に現地調査を行った。さらに,中央研究院の研究者とは,日本側で見出し,デジタル化が進行中であった戦前期の台湾の地図データの共有に関する打ち合わせを行った。 平成28年3月にも台湾を再訪した。中央研究院,台北市立図書館総館,陳中和紀念館,高雄市立歴史博物館,国家図書館,国立台湾図書館,台湾大学図書館などを訪問して,9月と同様に資料や文献を収集した。また,前述のデータ共有についての打ち合わせを継続した。その結果,次年度にはデータの共有ができる見通しとなった。 国内での資料の掘り起こしについては,平成27年5月に,防衛省防衛研究所戦史研究センター史料閲覧室,千代田区立日比谷図書文化館,国立国会図書館,12月に東京大学経済学図書館,平成28年3月に嘉手納町立図書館,沖縄県立図書館,那覇市立歴史博物館などを訪問して資料を閲覧したほか,他の研究者との情報交換を行い,これまでに収集した資料の整理を行った。 これまでの研究成果については,平成27年9月にマカオ大学で開催されたPNC2015と平成28年2月に熊本県立大学で開催されたH-GIS合同研究会で報告することができた。なお,これらの活動を中心に,前年度に引き続き,研究の具体的な様子をブログ「居住環境学科な日々」で紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では平成26年度中に完成を目指していた空中写真と地図を用いたハンドブックの進行が遅れていたため,平成27年度はじめの段階では,年度の前半には完成を目指していた。この製糖工場と社宅街に関するハンドブックについては,調査の進行に応じて改訂する箇所が出てくるとは考えられるものの,一応の完成をみた。 さらに,当初の予定では,平成27年度は,①郷土史や地域史に関する資料を収集すること,②前年度の補足調査を行うこと,③戦書や米軍関係資料を収集すること,④国内での資料の掘り起こしを行うこと,を実施する予定であった。 このうち①については,収集にはキリがないと言え,当初考えていた資料や文献については,おおよそ収集できた。また,③については,当初想定していたよりも現段階では資料の存在が少ない印象であるものの,収集をほぼ終えることができた。そのため,「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では,平成28年度は,研究のまとめと考察を集中的に実施する予定であった。具体的には,①これまでに収集した資料/史料や文献を用いて,全44ヵ所の製糖工場と社宅街の復原配置図を作製して当時の建設者の意図を読み取り,人々の生活を明らかにすること,②工場や社宅街と周囲の街や集落との関係が,どのように変遷したのかも明らかにすること,を実施する予定である。 平成27年度末の段階では,研究課題全体の進捗状況がおおむね順調であることから,平成28年度は本研究の申請時に既に計画していた通り,研究のまとめに集中したい。ただし,平成28年熊本地震により,年度当初はほとんど研究を進めることができていないため,今後,鋭意研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
昨年度の実施状況報告書における使用計画から大きく変更があった点は,次の通りである。旅費のうち,研究成果を発表したH-GIS研究会が研究代表者の所属機関で開催されたため,成果発表用国内旅費は使用しなかった。また,台湾での現地調査時と資料整理時には,諸般の事情から調査補助者と資料整理補助者(いずれも研究協力者)には無償で補助をお願いせざるを得なかったため,謝金を使用しなかった。 一方で,日本側で見出して台湾側と共有を目指している戦前期台湾の地図のデジタル化に費用がかさんだ。また,当初の計画では見込んでいなかった論文掲載料を支出した。これらを差し引きすると9万円弱が,次年度に繰り越しとなったため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の使用計画は,以下のように予定している。合計588千円(当初計画額:500千円,前年度未使用額:88千円)。 消耗品費148千円(図書・各種資料/史料(台湾の地方史・区域史関連)50千円,図書・各種資料/史料(製糖業関連関連)48千円,一般文具(ファイル・筆記具・記録メディア・トナーなど)50千円)。国内旅費140千円(資料収集東京方面70千円,研究成果発表70千円)。外国旅費150千円(台湾(夏季,1週間)150千円)。人件費・謝金70千円(資料整理補助70千円)。その他80千円(台湾からの資料の郵送料20千円,複写費20千円,報告書印刷40千円)。
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Research Products
(3 results)