2016 Fiscal Year Research-status Report
讃岐国善通寺における伽藍構成の近世的変容過程に関する研究
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26420655
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
山之内 誠 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (40330493)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世寺院 / 大衆参詣 / 善通寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に善通寺に保管されている近世資料の調査分析を通じて、善通寺における規制伽藍の形成過程を明らかにしていくことを目的としている。 平成27年度までの研究では、善通寺が近世寺院としての空間的性格を獲得していく過程を解明するため、御影堂を中心とする西院に大衆参詣のための空間が発生・発展していく様相について検討し、まとめてきたが、これらは建物の規模や配置に関する、いわば日常的で固定的な空間の変遷を論じたものと考えらえる。しかし一方で、居開帳などの際に臨時に設営された非日常の空間については、未検討のままであった。このため、平成28年度の研究調査では、主として江戸時代中・後期における善通寺の居開帳の様相について、調査研究を行った。具体的には、安永2年(1773)に善通寺伽藍で行われた御嘉辰(50年に一度の弘法大師の誕生会)における開帳場の分析を行った。この法会では、弘法大師の稚児御影像等の開帳が執り行われ、幸いにも指図を伴った詳細な設営の記録が残されていたため、その記録等を手掛かりに、臨時設営された開帳場の実態を探った。その結果、金堂では、太鼓張り障子を多用して参詣動線に沿って空間を細分化し、進行中の五重塔再建事業に関わる四仏や、寺院の由緒に深くかかわる重宝を並列的に配置したのに対し、御影堂及び護摩堂では、仮囲いの柱間装置はほとんど用いず、常設の空間に簡単な結界竹などを置く程度の設営とし、各堂の主尊(稚児大師像、瞬目大師御影、不動尊)を主役に据えた弘法大師信仰の場として開帳場が演出されており、展示方式に多様性があることが判明した。 これらの成果は、現在論文集(藤井恵介先生退官記念献呈論文集、中央公論美術出版から2018年1月出版予定)に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたよりも、善通寺において撮影した近世文書資料の解読に時間を要したことにくわえ、成果の一部を平成28年12月末に論文投稿したことにより、成果のまとめに十分な時間をとれなかったため、過日、平成29年度末までの期間延長を申し出て、了承いただいたところである。平成29年度末までの取りまとめについては、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度末までに、善通寺で撮影した古文書等の収集資料の解読・分析を一通り終えたため、平成29年度は報告書のとりまとめ作業をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究報告書の取りまとめ・印刷の作業が、研究期間の延長により平成29年度へと繰り越しとなったため、残額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
報告書のとりまとめと印刷費用として、残額を使い切ることを見込んでいる。
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Research Products
(1 results)