2015 Fiscal Year Research-status Report
CO2地中貯留におけるキャップロックの長期シール性能評価
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26420847
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
徂徠 正夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (30443196)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CO2地中貯留 / 遮蔽性能 / キャップロック / スレッショルド圧 / 浸透率 / 地化学反応 / 炭酸塩鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、CO2地中貯留におけるキャップロックのシール性能および貯留層の圧入性の両方の観点から、岩石が反応する際の水理特性の変化を定量的に評価した。日本各地の露頭から採取された3種類の泥岩(浪花層、大原層および一志層群泥岩)、五日町層群泥灰岩、および2種類の砂岩(灰爪層石灰質貝屑砂岩および大泊有孔虫砂岩)を選定した。初めに、超臨界CO2-水反応システムにより、閉鎖系での反応実験を行った。反応に先立ち、岩石を直径14 mm、高さ10 mmの円筒状に成形した。個々の岩石に対して4個の試料を用意し、異なる時間別々に反応させた。反応時間は、1週間、2週間および4週間とした。実験中はオーブン内を40℃に保持し、超臨界CO2で10 MPaに加圧維持した。次に、反応後の試料に対して、超臨界CO2シール圧測定システムを用いて浸透実験を行った。室温、大気圧下での浸透率測定に引き続き、10 MPa、40℃の条件下で段階昇圧法によりスレッショルド圧を測定した。 今回の実験により、水理特性に及ぼす地化学的な影響が岩石種によって全く異なることが確認された。すなわち、浪花層泥岩、大原層泥岩および灰爪層石灰質貝屑砂岩は4週間の反応でほとんど変化がみられなかったが、その他の岩石では、反応時間の経過と共に、浸透率が増加し、スレッショルド圧が減少した。実際には、水理特性が変化した岩石のうち、一志層泥岩と五日町層群泥灰岩では反応後の試料においてクラックが形成した。一方で、大泊有孔虫砂岩では、比較的多量に含まれる炭酸塩鉱物がCO2溶解水中で溶解した結果、シール性能が低下したと考えられる。ここでは、同じ石灰質の灰爪層石灰質貝屑砂岩では水理特性が変化しなかった点が注目される。この理由として、灰爪層石灰質貝屑砂岩では流路になる空隙が少ない結果、炭酸塩とCO2溶解水の反応が進行しなかったことが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度と同様に、浸透率が低い岩石が含まれていることから、試料の水理特性評価にやや時間を要しているが、今後は試料数も減っていくことから特に問題はないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
反応後に採取した溶液を分析することで、地化学反応で溶解した鉱物種を特定する。次に、岩石試料をカルサイトおよび長石の溶解成分と共に反応させることで、岩石内部での二次鉱物充填によるシール能力強化の可能性を検証する。最終的に、各種岩石試料について、岩石の孔隙率や炭酸塩含有量が反応後のシール性能変化に及ぼす影響を体系化する。
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Causes of Carryover |
今回の実験では、反応後の試料の水理特性評価に時間を要したことから、当初予定の地化学反応を期間内に終了させることができなかった。その結果、反応後の溶液組成分析に関する外注業務が次年度に繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では、反応実験および浸透実験そのものに主眼を置いており、それ自体が研究要素とならない実験試料の基本的な物性や情報に関わるデータの取得については、外注業者や所属機関内の分析センターを最大限活用することを試みる。具体的には、実験終了後の岩石試料および同一岩石片から採取した原岩試料に対するモード測定(偏光顕微鏡下での鉱物組成分析)、粉末X線解析による鉱物同定、走査電子顕微鏡観察と、所定時間ごとに回収した溶液試料に対するICP(高周波誘導結合プラズマ)発光による組成分析に関して、外注費を計上する。
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