2014 Fiscal Year Research-status Report
ダイバータ領域励起水素分子の高エネルギーイオンによる生成消滅ダイナミクスの解明
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26420848
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡本 敦 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50396793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 振動励起水素分子 / ヘリコン波放電水素プラズマ / 再結合プラズマ / 非接触ダイバータ / 高エネルギーイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイバータ領域に流入する高エネルギーイオンが非接触ダイバータ形成に重要な再結合過程に与える影響を解明するための研究を遂行し、高エネルギーイオンによる励起状態水素分子の生成消滅を評価するための研究基盤となる以下の成果を得た。 (1)ビーム入射装置と直線型高密度プラズマ源DT-ALPHAを組み合わせた実験を行い、ヘリウム再結合プラズマ中へのヘリウムイオンビーム入射に伴うプラズマの応答を観測することに成功した。 (2) DT-ALPHA装置において高密度水素プラズマ生成を行うため、電子密度の外部磁場強度依存性を系統的な実験により明らかにした。低域混成共鳴周波数の磁場強度依存性及び電子密度依存性に着目することで高密度プラズマ生成に適した実験条件を設定できることを見出した。 (3) プラズマの沿磁力線方向の流速を画像診断より評価する手法を開発し、電気的計測法との比較で良い一致を得た。これによりプラズマに対する同種の高エネルギーイオンの影響を記述する一次元モデルと実験結果の比較が可能になった。 (4) 陽子ビームの選択入射と分子イオン遮断のためのExBフィルターの概念設計を行い、エネルギー10keVのビームに対して、磁場強度0.01Tおよび電場強度100V/cm程度を印加することで十分機能するフィルターの寸法を決定した。 (5) 再結合プラズマの維持に電子温度だけでなくイオン温度も重要なパラメータとなり得ることを指摘し、イオン温度計測に着手した。ドップラー分光法によるイオン温度計測に成功し、電離進行プラズマ条件で約1eVであることを明らかにした。 (6) 水素プラズマ中の分子スペクトルを高波長分解能の分光器を用いて測定し、600-640nm付近に存在するスペクトルの同定を行った。得られたFulcher帯の発光強度から水素分子振動励起状態の占有密度分布を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画に従い、おおむね順調に研究を遂行した。実験を進めていく過程で、プラズマ流速やイオン温度など、高エネルギーイオンが再結合過程に与える影響を解明する上で従来あまり重視されなかったパラメータが重要となる場合が存在することが明らかになった。そこで、本年度実施の計画であった陽子ビームの選択入射のためのフィルター開発を概念設計まで完了させた段階で、プラズマ流速やイオン温度の計測法開発や計測機器の整備を行った。計測機器の整備により、次年度以降の計画であった、水素分子線スペクトルの計測にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね次年度の研究実施計画に従い研究を推進することが適当であると考えている。本年度の研究の過程で判明した新たに計測が必要となる実験パラメータへの準備対応は、本年度にほぼ完了している。 陽子ビームの選択入射に関してはフィルターを用いる方法と並行して、固体表面から陽子のみを発生させ加速する方法の検討も行う。前者の課題は狭く短いビームダクト内で十分な性能を発揮するための工学設計であり、ビーム電流モニターを増設して既存のディフレクターによる予備実験を行って対応する計画である。後者の課題は陽子加速の原理検証にあり、前述のビーム電流モニターを応用して原理検証実験を行って対応する計画である。
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Causes of Carryover |
研究の過程で従来あまり重視されなかった物理量が重要となる場合が存在することが明らかになった。これらの物理量の計測も実験研究の重要な実施項目となる。 そこで、本年度実施の計画であったビーム選択入射フィルター開発を概念設計まで完了させた段階で、これらの物理量を計測しつつ次年度以降の実施項目にも準備するため、機器の整備を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ビーム選択入射に関して、フィルターを用いる方法と固体表面を利用する方法を並行して検討する。予備実験・原理検証実験のためビーム電流モニターを増設する。得られた結果をもとに、前者のフィルター、または、後者の固体表面(金属電極)を製作する。
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