2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロGPCR変調によるシナプス可塑性調整機構:表面プラズモン共鳴による解析
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26430012
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田端 俊英 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (80303270)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Gタンパク質共役型受容体 / ニューロン / シナプス可塑性 / グルタミン酸 / ガンマ・アミノ酪酸 / Cキナーゼ / 蛍光カルシウム・イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
小脳プルキンエ細胞に発現する1型代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は運動学習を支えるシナプス可塑性である小脳長期抑圧のトリガーである。我々はこれまでの研究で、mGluR1が別種の代謝型受容体(B型γ-アミノ酪酸受容体GABAbR、1型アデノシン受容体A1R)と複合体を形成し、これら受容体の相互作用が小脳長期抑圧を促進・抑制して運動学習の制御機構として働いている可能性を示してきた。 本研究ではHEK-293細胞を用いた還元的な実験系において受容体相互作用の分子機序を調べた。平成28年度はGABAbR-mGluR1相互作用に取り組んだ。まず、tet-Opプロモーター制御下でGABAbRとmGluR1を共発現する細胞株を作出した。次に、免疫共沈によりこれら受容体が複合体を形成することを見出した。さらに、蛍光カルシウム・イメージングを用いて、GABAbRからmGluR1への機能変調作用を解析した。mGluR1アゴニストDHPGを細胞に急速投与すると、mGluR1に連関する細胞内カルシウム濃度上昇が観察された。30 nMのGABAbRアゴニストbaclofenを投与すると、DHPGによる細胞内カルシウム濃度上昇の振幅が50-500 %増大した。GABAbRに共役するGi/oタンパク質を百日咳毒素によって阻害してもbaclofenの作用が見られた。GABAbRを構成する2つのサブユニットのうち片方だけを発現させた細胞では、baclofenによる作用は見られなかった。これらの結果は、i) GABAbRとmGluR1はニューロン特異的細胞内環境に依存せず、複合体を形成・相互作用すること、ii) リガンド結合によってひき起こされるGABAbR全体の構造変化がmGluR1の機能変調につながっていること、iii) 機能変調の仲介にはセカンド・メッセンジャーが重要でないこと、を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の主目標はGABAbRとmGluR1の構造的および機能的相互作用を解析することであった。我々はこれらを共発現する細胞株の作出に成功し、この実験系においてこれら受容体が複合体を形成すること、GABAbRからmGluR1へ増強的な変調作用が発揮されることを明らかにした。主たる測定装置である表面プラズモン測定装置が故障したものの、代替の方法(蛍光カルシウム・イメージング)によって当初予定していた機能的相互作用に関する主要な項目を検査することができた。以上のように、当該年度の目標をほぼ達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、機能的解析に用いるはずであった表面プラズモン共鳴測定装置が故障したため、平成28年度中は代替の方法(蛍光カルシウム・イメージング)による受容体相互作用の機能解析を行った。表面プラズモン共鳴測定はmGluR1の活性化が小脳長期抑圧の誘導に連関するために重要なシグナリング分子であるprotein kinase Cの活性度を測定でき、蛍光カルシウム・イメージングより受容体相互作用のシナプス可塑性への関与を精密に評価することができる。そこで、平成29年度は測定装置の修理が完了しだい(予定:平成29年5月中旬)表面プラズモン共鳴測定による解析を行い、この点を詳細に調べていく。またmGluR1からGABAbRへの逆方向のシグナリングと、それがシナプス伝達およびシナプス可塑性にもたらす影響も調べていく。
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Causes of Carryover |
主たる測定装置である表面プラズモン共鳴測定装置の光学系が不調となり、十分な感度が得られないようになった。製造業者に修理を依頼したところ、特注部品が必要なため、修理が完了するのは平成29年5月中旬ごろになるとの予測報告があった。受容体相互作用がシナプス可塑性に与える影響を精密に測定するためには、本装置が不可欠であるため、修理完了を待って当該実験項目を実施することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度使用額は表面プラズモン共鳴測定装置の修理費用と、この装置を用いた実験の実施に必要となる消耗品費に充てる。修理が完了した表面プラズモン共鳴測定装置を用い、受容体の相互作用がシナプス可塑性の誘導に重要なシグナル分子(protein kinase C)の活性度に与える影響を精密に測定する。
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[Journal Article] SCN5A(K817E), a novel Brugada syndrome- associated mutation that alters the activation gating of NaV1.5 channel2016
Author(s)
K. Kinoshita, H. Takahashi, Y. Hata, K. Nishide, M. Kato, H. Fujita, S. Yoshida, K. Murai, K. Mizumaki, K. Nishida, Y. Yamaguchi, M. Kano, T. Tabata, N. Nishida
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Journal Title
Heart Rhythm
Volume: 13
Pages: 1113-1120
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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