2014 Fiscal Year Research-status Report
樹状細胞選択的がんワクチンデリバリーシステムの開発
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26430179
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
葛島 清隆 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫学部, 部長 (30311442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 英作 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30252951)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞傷害性Tリンパ球 / 樹状細胞 / 細胞透過性ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、樹状細胞(DC)に特異的に侵入する複数の細胞透過性ペプチド(CPP)候補を同定した。すなわち、健康成人末梢CD14陽性細胞からGM-CSFとIL-4で誘導したDCを、ペプチドライブラリー(実際にはぺプチド-cDNAキメラ分子)と数時間混合培養し、細胞内に侵入したペプチドに結合しているcDNAをPCRで増幅した。In vitro transcription法およびtranslation法でライブラリーを再編し、再度DC透過実験を行った。この操作を数回繰り返すことでライブラリー内のDC透過クローンを濃縮することが可能になり、最終的にDCに高効率で透過する候補ペプチドの配列を複数個得た。これらのペプチドは10個程度のアミノ酸から構成される。同定されたDC透過性ペプチドのN-末端に蛍光色素FITCを結合させた分子がDCに高効率で透過し、ヒト線維芽細胞にはほとんど透過しないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、樹状細胞(DC)に選択的に透過できる細胞透過性ペプチドcell-penetrating peptide(CPP)を同定することである。CPPを付加した抗原蛋白がDC内に侵入した後、抗原処理プロセスによってエピトープペプチドに切断され細胞表面に提示される。一方、このCPPはDC以外の細胞には侵入しないので、それらの細胞表面においてCTLに提示されることはない。この結果、CTLは増殖や分化に有利なシグナルのみをDCから受けることで、より有効な免疫誘導を可能にすることができると考えられる。本年度は、研究の基盤となる複数のCPP配列を特定することができたので(2)とした。 今回同定した配列は、ヒトのDCに侵入することができるが、インビボ免疫誘導を確認するためには、これらCPPがマウスDCにも侵入し得ることを確認する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、同定したDC指向性CPPが、ヒトDCに選択的に侵入し、抗原提示ルートに合流できることを実験的に確認することである。すなわち、a)DC指向性CPPのC-末端に、ヒトサイトメガロウイルスpp65蛋白由来のHLA-A*24:02拘束性CTLエピトープ配列QYDPVAALFを結合したペプチドを合成する。この際に、エピトープの両端に5-10アミノ酸程度の余剰分を付加し、細胞内でのプロセスが必要な構造を付与する。b)抗原提示細胞としてHLA-A*24:02陽性のDCを調整する。対照とするDC以外の抗原提示細胞として、HLA-A*24:02陽性の皮膚線維芽細胞を用いる。c)2種の抗原提示細胞にCPP-エピトープ融合ペプチドを添加する。CPPの浸透と細胞内での抗原プロセスに必要な3-4時間を待って、HLA-A*24:02拘束性CMVpp65特異的CTLクローンを添加する。翌日、培養上清に含まれるインターフェロン-γをELISA法で測定する。DCと線維芽細胞に対するCTL応答性の違いを比較することで、CTLへのエピトープ提示がどの程度DC選択的に行われているか検証することができる。 また、CTLクローンの準備が極めて煩雑であるため、それにかわる簡便なエピトープ検出系を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
思いがけず研究室に残されていた試薬等を活用することができたので、当初予定していた物品費よりも少ない支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験を効率的に行うために、細胞内で抗原がプロセスされて提示されるペプチドをより簡便に検出できる新しいシステムが必要と感じているので、その費用に充てる予定である。
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