2016 Fiscal Year Research-status Report
ウィルスによるヒト抗ウィルス酵素の作用阻止機構の解明と創薬に向けた分子基盤の構築
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26440026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 崇 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10415250)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | APOBEC / NMR / Vif |
Outline of Annual Research Achievements |
抗HIV1因子APOBEC 3G(A3G)は、一本鎖DNA(ssDNA)上のシチジンを脱アミノ化してウラシルに変換するシチジン脱アミノ化酵素である。A3GはHIV1のRNA遺伝子から逆転写により生成したssDNA上のCCCをCCUに変換することでHIV1を無毒化する。一方HIV1は、このA3Gを特異的にユビキチン化してプロテアソーム分解に導くVif蛋白質を持つ。Vifは宿主のEloB/C、CBFβ、Cul5とVif複合体を形成することでA3GのN端側ドメインに特異的に結合する。我々は昨年度、Vif複合体がA3GのC端側ドメインの酵素活性をも阻害する効果があることを新たに見出した。今年度は、Vif複合体または、各構成タンパク質と、ssDNAとの相互作用をゲルシフトアッセイ及び蛍光偏光解消法により調べた。また、Vif複合体とA3Gの相互作用について、ゲルろ過及びNMR法により調べた。得られた知見により我々は、Vif複合体によるA3Gの抗HIV活性阻害について、新たな経路を提案するに至った。 他方、別の抗HIV1因子であるAPOBEC 3F(A3F)では、C端側ドメインにシチジン脱アミノ化活性がある。A3FはssDNA上、TC配列のシチジンを脱アミノ化してTU配列に変換する。今年度は、配列の異なる種々のssDNAに対してウラシルグリコシラーゼアッセイ(UDGアッセイ)を行い、A3Fの活性を調べた。そして、A3FがTTCA配列のシチジンを好んで脱アミノ化することがわかった。またA3Fの種々の点突然変異体について、シチジン脱アミノ化活性(UDGアッセイ)及びssDNAとの結合活性(ゲルシフトアッセイ、蛍光偏光解消法)を調べ、これらの活性に関わる部位を同定した。これらにより、A3Fによる抗HIV活性の発現機構に関して新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Vifは宿主のEloB/EloC、CBFβ、Cul5とVif複合体を形成することでA3GのN端側ドメインに特異的に結合する。昨年度は、Vif複合体がA3GのC端側ドメイン(CTD)の酵素活性を阻害する効果があることを新たに見出した。そこで今年度は、まず、Vif複合体または、各構成タンパク質と、ssDNAとの相互作用をゲルシフトアッセイ及び蛍光偏光解消法により調べた。その結果、Vif複合体は比較的強くssDNAと結合すること、一方Vifを除く各構成タンパク質とssDNAとの相互作用は非常に弱いことがわかった。Vifは単独では溶解度が低いためssDNAとの相互作用を調べることが出来なかったが、Vif複合体とssDNAの親和性の多くはVifが担っているものと思われる。また、Vif複合体とA3G-CTDの相互作用について、ゲルろ過及びNMR法により調べた。その結果、Vif複合体はA3G-CTDと弱くではあるが直接結合することが明らかとなった。現在NMR法により結合部位の同定を進めている。 これまで、Vif複合体に対するRNAアプタマーの取得に向けて、SELEX法の条件検討を行ってきた。今年度は、RNAアプタマーの候補を取ることが出来たので、配列や結合能の解析を目下進めている。 A3FのCTDについては今年度、ウラシルグリコシラーゼアッセイ(UDGアッセイ)により種々の条件で活性を調べた。そして、A3FがTTCA配列のシチジンを好んで脱アミノ化すること、活性にはpH依存性及びssDNAの長さ依存性があること等を明らかにした。またA3Fの種々の点突然変異体について、シチジン脱アミノ化活性(UDGアッセイ)及びssDNAとの結合活性(ゲルシフトアッセイ、蛍光偏光解消法)を調べ、これらの活性に関わる部位を同定した。これらの知見について、目下論文を作成するとともに、追加実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、Vif複合体に対するRNAアプタマーの取得に向けてSELEX法の条件検討を行ってきた。今年度はRNAアプタマーの候補を得ることが出来たので、配列や結合能の解析を進めており、それによりVif複合体に対する非特異的なRNA結合を抑えるための条件が明らかとなってきた。今後は、これまでに蓄積された知見を発展させて、さらに特異性及び結合能の高いRNAアプタマーを取得する。 一方、Vif複合体中のVifのみを15N標識化することに成功し、NMRスペクトルを得たが、著しく少ない数のシグナルしか得ることが出来なかった。これは分子量が大きいためだと考えられるので、今後は、Vif複合体中の非交換性水素原子を重水素原子に置換するとともに、Vifのみを15N標識化する。この試料を用いて15N-1H TROSYスペクトルを測定すれば、より感度高く15N-1H相関シグナルが得られると期待される。 今後はさらに、上の安定同位体標識化Vif複合体と非標識A3G CTD、A3F CTD、またはRNAアプタマーを使ってケミカルシフトパーターベーションを行い、Vif上の結合部位の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
Vif複合体に対するRNAアプタマーの取得に向けてSELEX法の条件検討を行ってきた。今年度はRNAアプタマーの候補を得ることが出来たので、配列や結合能の解析を進めており、それによりVif複合体に対する非特異的なRNA結合を抑えるための条件が明らかとなってきた。したがって、これまでに蓄積された知見を発展させて、さらに特異性及び結合能の高いRNAアプタマーを取得することに計画を変更した。A3Fについては現在論文作成を進めており、追加実験を含め、必要なデータを得ているところである。Vif複合体の安定同位体標識化については、重水素化を行う必要があることがわかった。以上を次年度に行うため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Vif複合体に対してより特異的で且つ高親和性のRNAアプタマーを取得する。A3Fについて蓄積したデータに、さらに追加データを集め、論文を完成させ投稿する。Vif複合体、得られたRNAアプタマーを安定同位体標識し、構造、機能解析を行う。未使用額は、これらの経費に充てることにしたい。
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Research Products
(39 results)
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[Journal Article] Molecular Landscape of the Ribosome Pre-initiation Complex during mRNA Scanning: Structural Role for eIF3c and Its Control by eIF52017
Author(s)
Obayashi E, Luna RE, Nagata T, Martin-Marcos P, Hiraishi H, Singh CR, Erzberger JP, Zhang F, Arthanari H, Morris J, Pellarin R, Moore C, Harmon I, Papadopoulos E, Yoshida H, Nasr ML, Unzai S, Thompson B, Aube E, Hustak S, Stengel F, Dagraca E, Ananbandam A, Gao P, Urano T, Hinnebusch AG, Wagner G, Asano K.
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Journal Title
Cell Report
Volume: 18
Pages: 2651-2663
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] リグノセルロースの糖-リグニン複合体とその酵素反応の解析2017
Author(s)
西村 裕志,左近 静香, Jenny Arnling Baath, Amanda Ristinmaa, Johanna Nilsson, Gunnar Westman, Lisbeth Olsson, 永田 一真, 永田 崇, 片平 正人, 渡辺 隆司
Organizer
第67回日本木材学会大会
Place of Presentation
九州大学(福岡市)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-19
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[Presentation] Non-coding RNA/DNA recognition by TLS/FUS that causes repression of cyclin D1 transcription and telomere elongation2016
Author(s)
Kondo, K., Mashima, T., Oyoshi, T., Yoneda, R., Kurokawa, R., Nagata, T. and Katahira, M.
Organizer
The 43rd International Symposium on Nucleic Acids Chemistry
Place of Presentation
熊本大学(熊本市)
Year and Date
2016-09-27 – 2016-09-29
Int'l Joint Research
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[Presentation] Accurate and molecular-size-tolerant NMR quantitation of diverse compounds, and real-time monitoring of enzymatic reaction2016
Author(s)
Okamura, H., Kamba, K., Nishimura, H., Kigawa, T., Watanabe, T., Nagata, T., Katahira, M.
Organizer
The XXVIIth International Conference on Magnetic Resonance in Biological Systems
Place of Presentation
国立京都国際会館(京都市)
Year and Date
2016-08-21 – 2016-08-26
Int'l Joint Research
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[Presentation] Analysis of molecular interaction of peptides with lignin for lignocellulosic biorefinery2016
Author(s)
Watanabe, T., Yamaguchi, A., Oshiro, S., Suetomi, T., Nishimura, H., Nagata, T., Mashima, T., Katahira, M., Isozaki, K., Takaya, H. and Nakamura, M.
Organizer
4th Symposium on Biotechnology applied to Lignocelluloses
Place of Presentation
CSIC downtown Campus (Madrid)
Year and Date
2016-06-19 – 2016-06-22
Int'l Joint Research
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