2014 Fiscal Year Research-status Report
繊毛虫における有性生殖開始機構・性決定および性成熟機構の解明へ向けた網羅的解析
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26440126
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
杉浦 真由美 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (60397841)
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Project Period (FY) |
2014-02-01 – 2017-03-31
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Keywords | 繊毛虫 / 接合 / 性成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
原生生物繊毛虫の有性生殖開始機構、性決定機構の解明を目指し、原始的な繊毛虫の一種であるブレファリズマを用いて、交配実験による子孫株の樹立と性的成熟過程の観察、および性成熟段階の異なる未熟期と成熟期の細胞における網羅的遺伝子発現解析を行った。 1.ブレファリズマにおける子孫株の樹立と性成熟過程の観察 繊毛虫ブレファリズマはI型、II型の二種類の性(接合型)をもつ。本研究室で維持しているブレファリズマ株を用いて交配実験を行い、最も高い確率で有性生殖(接合)を完了できることがわかった株間の掛け合わせによって、複数の子孫候補株を樹立した。正常な接合過程を経て樹立された子孫株は性的に未熟期にあり、その後分裂を繰り返すことによって発生過程(性成熟過程)を進行させると考えられている。そこで、樹立した各子孫候補株を単離培養し、適宜サンプリングを行い、その時点における分裂齢(分裂回数)のカウントと性成熟度、接合型チェックを行った。その結果、約12-13回分裂時には接合活性がみられず、性的未熟期にあることが確認された株が7株得られ、少なくともこれらの7株は子孫株であることが確認された。 2.性的未熟期細胞と成熟期細胞における網羅的遺伝子発現解析 ブレファリズマの性成熟過程では「接合に関連する因子」や「接合型発現に関与する因子」など有性生殖に関与する多くの因子が発現されてくると考えられる。これらの遺伝子を網羅的に解析するため、樹立したブレファリズマ子孫株の未熟期の段階にある細胞と性的に成熟期にあるI型細胞、II型細胞の3株からRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いてde novo RNA-seq解析を行った。現在データ解析を行っており、今後、得られたデータを元に、未熟期細胞と成熟期細胞(I型およびII型)において、ある特定条件下でのみ特異的に発現上昇または低下している遺伝子の同定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究目的に記載した「原生生物繊毛虫の性決定と有性生殖を制御している分子機構の解明」を目指して、平成26年度に計画していた「ブレファリズマにおける子孫株の樹立と性成熟過程の解析」および「性的未熟期細胞と成熟期細胞における網羅的遺伝子発現解析」を計画通りに行った。 性的未熟期を確認できた7株の子孫株を樹立することに成功し、この子孫株と成熟期にあるI型細胞とII型細胞のRNA-seq解析を行なった。これらの成果は、平成26年度の目標をほぼ全て達成したものであり、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成26年度の成果を元に、引き続き「性的未熟期細胞と成熟期細胞における網羅的遺伝子発現解析」に取り組む。未熟期細胞と成熟期細胞(I型およびII型)の次世代シーケンス解析によって得られた配列情報を整理し、各サンプルから得られたリード情報を元に遺伝子発現レベルを比較する。そして、将来的には、性成熟や接合型の発現に関連している可能性のある遺伝子群を探ることを目標として、まずは未熟期または成熟期のI型細胞、成熟期のII型細胞に特異的な発現を示している可能性がある遺伝子群を明らかにし、整理する。 次に、ブレファリズマにおける「接合型特異的な遺伝子発現制御の解析」を目的として、「異なる接合型間のヒストン修飾レベルの比較」に取り組み、「接合型特異的発現を示す遺伝子領域におけるヒストン修飾の変動パターンの解析」を試みる。 まずは、本研究室で維持している、野外から採集してきた株を含めた複数のブレファリズマ株の接合型の判定を行い、I 型またはII 型を発現していることを確認した細胞株を用いて、ヒストン修飾レベルをウエスタンブロッティング、免疫染色法によって検出し比較する。アセチル化、メチル化を中心に様々なヒストン修飾抗体を用い、接合型の違いと関連のある可能性のあるヒストン修飾の有無を調べる。また、性成熟度とヒストン修飾との関連をみることも目標とする。 さらに、特定のヒストン修飾が接合型の違いと関連がある可能性が示された場合には、網羅的遺伝子発現解析の結果から明らかとなった接合型特異的発現を示す遺伝子領域における各候補ヒストン修飾レベルを検出する。そして、I 型特異的発現を示す遺伝子群とII 型特異的発現を示す遺伝子群との間で各ヒストン修飾レベルを比較し、法則性が見出されるか検討する。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンス解析によって得られる膨大なデータを管理するためのPC周辺機器を購入するための予算として考えていたが、次世代シーケンス解析が終了する時期が年度末となったため、年度内に購入ができなかったために生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成27年度分として請求した助成金と合わせて、当初の予定通り、消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(7 results)