2014 Fiscal Year Research-status Report
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26440160
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長里 千香子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00374710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 厚子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特任助教 (40509999)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 褐藻類 / マイクロインジェクション / 排除分子量 / 発生 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐藻類と一部の緑色植物には、原形質連絡(隣接する細胞の細胞膜が隔壁に対して垂直に貫通・連結する管状構造)が存在している。褐藻類では、原形質連絡の構造と機能に関する知見がほとんどないことから、排除分子量、発生段階による出現・分布の違いなどを明らかにするために以下の解析を行った。 Halopteris(クラガシラ目・多列形成的)の細胞に蛍光標識デキストラン (3kDa, 10kDa, 40kDa)、組換えGFP (27kDa) を細胞内に注入し、原形質連絡を通過する分子サイズを調べた。その結果、排除分子量の限界は27-40kDaの間にあることがわかった。また、3kDaと10kDaで隣接細胞への移動時間、距離を比較したところ、分子サイズが小さいほど、早く移動し、サイズが大きくなると移動量にも制限があることがわかった。そして、物質の移動には、極性が存在していることも示唆された。原形質連絡の細胞骨格による調節機構を調べる目的で、①アクチン阻害剤 (latrunculin B, rhodamine phalloidin)、②微小管阻害剤 (nocodazole, taxol) と10kDa蛍光標識デキストランを同時に細胞内にインジェクションしたところ、アクチン重合阻害剤であるlatrunculin Bにより隣接細胞への移動が阻害される傾向が見られた。 ヒバマタ接合子の発生における原形質連絡の出現・分布の変化について、電子顕微鏡で観察を行ったところ、葉状部が分裂を繰り返し、表層細胞と髄層細胞へ分化を始める頃に、原形質連絡はpit field (集中して存在する領域)を形成し、単列形成的な仮根部では、分散して存在していることがわかった。そして、仮根部では排除分子量は10kDa以上であるのに対して、葉状部では3 kDa以下であることが蛍光標識デキストランの移動観察により示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画では、①原形質連絡のプロテオーム解析、②排除分子量の限界、③細胞骨格阻害剤による原形質連絡への影響、④原形質連絡周辺の細胞壁多糖類の特定が主なものであった。計画②に関しては、単列、多列、複雑な多細胞体制をとる場合について、比較を行うことができ、計画③に関しても一定の成果をあげることができた。計画①と④に関しては、現在、条件検討を含め、取り組んでいるところである。当該年度の計画すべてが達成できたわけではないが、一部、次年度の計画を前倒しに行ったことから、概ね、順調に研究計画は進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
原形質連絡プロテオミクスを行い、①緑色植物の原形質連絡に存在するタンパク質と相同性の高いタンパク質、②褐藻類の原形質連絡周辺に存在する多糖類の合成・分解に関わるタンパク質に着目し、ポリクローナル抗体を作製・局在解析を行う。
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Causes of Carryover |
予定していたプロテオミクスの解析と抗体作製が次年度になるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質量分析をするためのタンパク質解析関連試薬、抗体作製関連試薬を購入する。
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