2015 Fiscal Year Research-status Report
植物の花粉形成で重要な働きをする新規アラビノキナーゼの機能解析
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26440168
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
上田 健治 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (80279504)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 花粉形成 / L-アラビノキナーゼ / 糖代謝 / 突然変異体 / 細胞壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの花粉突然変異体の解析から見出されたCAP1遺伝子は、花粉形成に必須な996アミノ酸からなるタンパク質をコードしている。CAP1タンパク質はシロイヌナズナのL-アラビノキナーゼ(EC 2.7.1.46)と高い相同性を示すが、アラビノキナーゼ活性の有無は不明である。そこで、CAP1の組換えタンパク質を作製し、その活性を測定した。まず、CAP1全長をeXactタグとの融合タンパク質として発現させ、eXactタグを除いて組換えタンパク質rCAP1を精製した。rCAP1を基質(L-arabinose、ATP)と反応させた後、このキナーゼ反応で残存したATP量をルシフェラーゼの発光で測定したところ、rCAP1はL-アラビノースをリン酸化するアラビノキナーゼであることが実証された。また、rCAP1は植物の細胞壁を構成する他の単糖はリン酸化しなかった。CAP1のN末端から中央領域(1~561aa)および中央からC末端領域(436~996aa)の変異タンパク質rCAP1_NおよびrCAP1_Cの活性を測定したところ、rCAP1_Cは活性が検出されたが、rCAP1_Nは全く活性が検出されなかった。従って、CAP1のアラビノキナーゼ活性には中央からC末端領域が重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験の結果からCAP1タンパク質は大腸菌内で毒性があるらしく、組換えタンパク質の合成は困難が予想された。しかし、使用するベクターの変更などによって、酵素活性を測定できる程度のタンパク質を合成させることができた。これまでに精製したL-アラビノキナーゼを測定した論文報告は無く、同じ単糖キナーゼであるガラクトキナーゼの反応液を改変したところ、精製アラビノキナーゼの活性を初めて検出することができた。このアッセイ系の確立により、CAP1はL-アラビノース以外の単糖をリン酸化しないこと、キナーゼ活性には中央からC末端領域が重要であることを発見できた。アラビノキナーゼのアッセイ系を利用することで、化合物ライブラリーからCAP1の活性を阻害する新規化合物をスクリーニングすることも可能になった。CAP1阻害剤で花粉不稔を誘発することができれば、イネの交配育種の除雄作業が不要になり、育種の飛躍的進展に寄与できるだけでなく、花粉症対策にも貢献できる。
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Strategy for Future Research Activity |
CAP1の中央からC末端の領域には、キナーゼ活性に重要と予想されるGHMP kinase N-terminal domain(IPR006204)およびL-アラビノースと結合すると予想されるGalactokinase galactose-binding domain(IPR019539)が存在する。そこで、これらのドメインを欠如あるいはアミノ酸置換させた変異タンパク質を作製し、アラビノキナーゼ活性の有無を解析する。また、シロイヌナズナのゲノム内の解析により、イネCAP1のオーソログと予想される遺伝子AtARA2が見出されている。そこで、AtARA2の遺伝子破壊系統種子を入手し、これらの系統で花粉が正常に形成されるかを調べる。
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Causes of Carryover |
やむを得ず端数を残してしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
小額のため特に計画はないが、平成28年度分として使用する。
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