2014 Fiscal Year Research-status Report
点パターンの定量化に注目した空間生態学の新たな数理的展開
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26440239
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高須 夫悟 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70263423)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 個体ベースモデル / 点パターンダイナミクス / トリプレット / 共進化 / 感染症の空間分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)トリプレットに注目した点パターンの定量化:トリプレット(3次構造)に注目した点パターンの定量化に取り組み、学術雑誌に発表した。完全な情報が与えられた場合、点パターンが2次構造のみで決定されうるという可能性を提示した。さらに、2次構造と3次構造を測定する際に従来無視してきた領域境界の影響を取り除く試みに着手し、境界の影響を除いたトリプレット密度の導出方法を確立した。この手法の確立により、1次構造と2次構造のみをもちいて3次構造を表現することに一定のめどが立った。 2)点パターンダイナミクスに関する様々なシミュレーションモデルの開発:1種系空間ロジスティックモデルを拡張し、各個体が様々な疾病状態を持つ感染症の空間拡大モデルを確率過程として記述した。具体的には、古典的SISモデルとSIRモデルを出生死亡を伴う点パターンダイナミクスとして記述するシミュレーションモデルとして実装した。さらに1次構造と2次構造に関する力学系を導出した。3次構造を以下に1次と2次構造で表現するかが鍵となる。 3)連続空間上のホスト・パラサイトの共進化動態モデル:鳥類の育児寄生において、卵模様の多型が観察される系が存在する。ホストとパラサイトのそれぞれについて、卵模様に関する空間分布のデータが得られつつあり、ホスト・パラサイトの共進化動態を点パターンダイナミクスモデルとして実装した。様々な条件下で、特定の模様を持つホストとパラサイトがスパイラル状など特徴的な空間パターンを示すことが明らかになり、トリプレットを用いたスパイラル模様の定量化に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリプレットに関する点パターン定量化の研究成果を学術論文として発表することができた。また、従来無視してきた境界による影響の排除方法を確立することができた。また、様々な生物集団の空間分布を点パターンと見なして取り扱う研究例(感染症やホスト・パラサイトの共進化動態など)を国内外の学会、研究集会で複数回発表することができ、本研究の取り組みをアピールすることができた。以上の理由から、研究は概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、平成27年度は以下の方針で研究を進める予定である。 1)空間SIS, SIRモデル・空間捕食モデルのシミュレーション解析とこれに対応するモーメントダイナミクスの導出:個体を点と見なし、連続空間上の個体が他個体との相互作用を経て出生、死亡、移動を繰り返す 一般的個体ベースシミュレーションを効率的に実行する並列アルゴリズムを用いて、感染症と捕食系のシミュレーション実験ならびに対応するモーメントダイナミクスの導出を行い、個体群動態において空間構造が果たす役割を再考する。 2)点パターンの定量化の本質の解明:点パターンの性質は 1 次と 2 次構造のみで決まり、3 次以上の高次構造は低次構造に従属するという本研究の予想(確信)の意味づけについて考察する。 3)個体の視点から空間個体群動態を再考する試みに着手する:個体を点と見なすことで個体の分布は点パターンと見なすことができる。従来空間交代群動態モデルで用いられてきた1)反応拡散系、2)コンパートメントモデル、3)格子モデルなどの数理的アプローチと点パターンダイナミクスの接点を探る。
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Causes of Carryover |
初年度に構成の数値計算用計算機を導入する予定であったが、アルゴリズムの改良ならびに並列処理により、既存の計算機設備を有効利用することが可能となった。数値計算用計算機導入を見送ったことが次年度使用額が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成27年度中に新たな計算機関連の消耗品ならびに旅費として有効利用する予定である。
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Research Products
(6 results)