2015 Fiscal Year Research-status Report
エミシとは誰だったのか-学際的研究で探る東北古代人の人類学的・考古学的実像-
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26440257
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
安達 登 山梨大学, 総合研究部, 教授 (60282125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (10374943)
坂上 和弘 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (70333789)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 古墳 / 古代DNA / ミトコンドリアDNA / 核DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究で、古墳時代人骨中のDNAが想像以上に劣化していることが明らかとなった。このため、こうした超高度変性試料においても集団遺伝学的解析を可能にするための解析システムの樹立に取り組んだ。
こうした試料の解析においては我々が継続的に開発を続けているAmplified Product-Length Polymorphisms (APLP)法が有効である。そこで、従来のミトコンドリアDNAのみならず、核DNAについても本法を用いた個人識別システムを設計し、論文として発表した。 また、従来のAPLP法では、競合する2つのプライマーのいずれかの5'末端に非相補的な塩基配列を追加することにより増幅産物の長さの違いを生み出し、これを電気泳動で検出することで1塩基置換の有無を検出していた。しかし、この方法では、テンプレートとなるDNAの塩基配列によっては、電気泳動時のPCRバンドの分離が不明瞭になる欠点があった。そこで、競合プライマーの5'末端に、従来の塩基ではなくイノシンをフラップとして追加することで、この欠点を克服する方法を開発し、論文として発表した。
さらに、上記のイノシンフラップによる新しいAPLP法をミトコンドリアDNAのハプログループ解析に応用し、合計84個の1塩基多型および欠失/挿入多型を検出するシステムを開発し、論文として投稿中である。加えて、この新しいAPLP法を用いた性別判定用プライマーセットも開発しており、これを用いた縄文時代人骨の性別判定にも成功している。この成果については、既に論文として投稿し、受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、従来の方法では遺伝的情報を得ることが困難だった試料からも、ミトコンドリアDNAのみならず、核DNAについても解析することが可能となった。これによって、従来の方法では解析できなかった試料についても解析成功の目処が立った。
さらに、2016年3月に入り、縄文時代人骨と形態的特徴が類似する個体が含まれていることで知られる、宮城県石巻市五松山洞窟遺跡出土人骨の解析について、石巻市教育委員会から正式な解析の許可を得ることができた。さらに、東北地方唯一の状態の良い弥生人骨である岩手県花巻市アバクチ洞窟遺跡出土の小児人骨について、既にDNAの抽出が成功しており、予察的な解析も終了している。28年度はこれらの人骨の詳細な解析をおこなうことで、典型的な古墳人骨である横穴式古墳人骨とは異なる、東北地方の弥生時代以前の人々の遺伝的特徴を明らかにできることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のごとく、東北地方の人類史を解明する上で極めて貴重な試料である宮城県石巻市五松山洞窟遺跡および岩手県花巻市アバクチ洞窟遺跡出土人骨の解析を進める。アバクチ洞窟遺跡人骨については既に予察的な解析が終了しており、DNAの状態が良好であることを確認済みである。また、五松山洞窟遺跡人骨についても保存状態は良好であり、DNA解析が成功する可能性が高いものと考えられる。
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Causes of Carryover |
消耗品購入時に極力安価なものを選んだ結果、使用額に余裕が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入に充てる予定。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] 中国広西邕江域の先史時代遺跡から出土した採集狩猟民の古病理学的特徴.2015
Author(s)
澤田純明, 李珍, 黄云忠, 黄強, 久保田慎二, 深山絵実梨, 渡辺慎也, 山形眞理子, Nguyen Lan Cuong, 洪曉純, 松村博文.
Organizer
第69回日本人類学会.
Place of Presentation
産業技術総合研究所臨海副都心センター(東京都・江東区)
Year and Date
2015-10-10 – 2015-10-12
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