2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代DNAシークエンサーによるカンキツおよびその近縁植物の遺伝的分化過程の解析
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26450039
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
永野 幸生 佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅史 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (00305161)
古藤田 信博 佐賀大学, 農学部, 准教授 (50355426)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カンキツ / ゲノム / カンキツ近縁属 / 遺伝資源 / 次世代シーケンサー / RAD-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代シークエンサーによるゲノム解析手法であるRAD-seqを用いて、カンキツの一つであるライムについて解析した結果を、Nature出版のScientific Reports誌に発表した。無性生殖するカンキツの遺伝的多様性獲得メカニズムは、これまで謎であった。本論文では、その主たるメカニズムがヘテロ接合性喪失(体細胞において染色体の一部がヘテロ接合からホモ接合に変化する現象)であることを提唱した。つまり、クローンと考えられていたものが遺伝的に変化することを示し、そのメカニズムも明らかにした。カンキツを含む果樹の研究においては、これは大きなブレークスルーである。ところで、異分野と考えられがちなヒト腫瘍学で、ヘテロ接合性喪失は盛んに研究されてきた。研究が極めて活発な腫瘍学の研究手法を園芸学の今後の研究に適用できることを示した点でも意義深い。 さて、佐賀大学ではカンキツ及びその近縁属を多数保有している。このうちの約150種についてRAD-seqで解析を行った。具体的には、RAD-seqの中でも、安価に多検体を解析することができるdouble digest RAD-seqを用いた。その結果、カンキツ近縁属の系統関係、カンキツ属内における種間の遺伝的距離、および、カンキツの各々の種の染色体の混ざり方を知ることができた。得られた結果はあまりにも膨大であり、ここに詳細に書き記すことができないが、いくつか代表的な例を挙げれば、1)カンキツ近縁属の系統関係が初めて精密にわかった、2)ライムは単一の種ではなくシトロンとパペダが交雑したものとシトロンとポンカンが交雑したものに二分類できた、3)日本本土と琉球のタチバナは異なっていた、4)無性生殖するカンキツの種は、ライム以外でも、主にヘテロ接合性喪失で遺伝的分化を起こしていた、5)種内交雑で発生した考えられる別の種を新たに発見した、などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に行おうとしていた実験は、概ね、達成できた。また、平成27年度に行おうとしていた実験も既に多くを実施した。しかし、得られた結果はあまりにも膨大であったため、結果を論文化する作業が遅れている。投稿した論文のいくつかは、まだ受理されておらず、また、まだ執筆できていない研究内容も多い。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
更に新しいサンプルをRAD-seq解析に供することで、さらに研究を推進する予定である。 さて、前述のように、得られた結果はあまりにも膨大であったため、結果を論文化する作業が遅れている。これまで私は実験科学を中心に研究してきたため、これほどまでに膨大な量の実験結果に出会ったことがなかった。研究を推進するためには、実験を進めることも重要であるが、結果をコンピューターで詳細に分析し、論文を執筆する作業に重きを置く必要があると痛感している。
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Causes of Carryover |
得られた結果はあまりにも膨大であったため、結果をコンピューターで分析することや、論文を執筆する作業に多くの時間をとられてしまった。そのため、実験に使用する経費が少なかった。また、投稿中の論文がまだ受理されていないことため、そのための経費も必要でなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析を行いたいサンプルは既に準備済みなので、順次、解析に供する予定である。また、投稿中や執筆中の論文が受理されれば、そのための出版経費が必要である。
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Research Products
(10 results)