2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代DNAシークエンサーによるカンキツおよびその近縁植物の遺伝的分化過程の解析
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26450039
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
永野 幸生 佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅史 鹿児島大学, 農学部, 教授 (00305161)
古藤田 信博 佐賀大学, 農学部, 准教授 (50355426)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カンキツ / ゲノム / カンキツ近縁属 / 遺伝子資源 / 次世代シーケンサー / RAD-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
カンキツの祖先種は、パペダ、シトロン、ブンタン、マンダリンであり、これらから派生したものやこれらが交雑したものが、よく知られて様々なカンキツの種・系統であると考えられている。しかし、まだわかっていないことが多い。そこで、次世代シークエンサーによるゲノム解析手法であるRAD-Seqを用いて、カンキツの様々な系統の遺伝的類縁関係を調べた。この解析には、代表的な系統の他に、マイナーな系統、および、ブータンに自生している系統も加えた。 この解析の過程でわかった重要な知見は、形態的分化と遺伝的分化が必ずしも一致しないことである。典型的な例は、我々がブータンで発見したヒマラヤン・ライムと名付けた系統である。ヒマラヤン・ライムは、メキシカン・ライムと形態が似る。しかし、メキシカンライムがシトロンとパペダが交雑したものであると推定されるのに対して、ヒマラヤン・ライムは、シトロンとマンダリンが交雑したものであると推定された。つまり、メキシカン・ライムと同じ種であり、種内変異によって少し形態が異なるヒマラヤン・ライムが生まれたと考えていたが、これは正しくなかった。他にもいくつか例を見つけたので、次に記す。1)ブータンで見つけたある系統は、形態的にはシトロンに似ているけれども、遺伝的にはレモンに近かった。2)メキシカン・ライムとlimon realは形態が異なるが、遺伝的には極めて近かった。3)スイート・レモンとベルガモットは、形態が異なるが、遺伝的には極めて近かった。このように、これまでの形態的分類は必ずしも正しくないことがわかった。 祖先種であるシトロンとマンダリンの交雑で出来たもの、あるいは、パペダとマンダリンの交雑で出来たものが解明されていなかったが、それぞれ、ヒマラヤン・ライムおよびBiloloであることがわかった点も重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に行う予定の実験は、全て実施できた。また、研究実績の概要で記したように極めて重要な成果が得られた。しかし、投稿した論文がまだ受理されていないことが問題である。この成果以外にも膨大なデータを持っており、順次、結果を整理し、論文化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究でわかった特に重要な次の二点を論文にすることを優先して研究を行う。 1)カンキツ近縁属の類縁関係が、これまでにない精度でわかった。特に、これまでの遺伝的分類や形態的分類の誤っていた点を解明したので、そのことを中心に報告する。 2)ウンシュウミカンやタチバナに代表されるマンダリンの起源地を推定することができたので、このことについて報告する。 また、香酸カンキツ等、いくつかの系統を追加して、実験屋コンピュータ解析を進め、さらに多くの知見を得ていく。
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Causes of Carryover |
得られたデータが膨大であったために、結果をコンピューターで分析することに多くの時間を費やした。また、投稿中の論文がまだ受理されていないために、その経費が必要なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の出版経費が多くかかると思われるので、そのために使用する。
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Research Products
(3 results)