2014 Fiscal Year Research-status Report
オオカミ尿中に含まれるピラジン化合物の恐怖誘起作用に関する研究
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26450141
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
長田 和実 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (00382490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏柳 誠 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20169436)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 恐怖誘発物質 / kairomones / オオカミ尿成分 / アルキルピラジン / 生物有機化学 / 農芸化学 / 行動生理学 / 神経生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
①野生動物に対するオオカミkairomonesの作用の確認 先行研究で明らかになったオオカミ尿中kairomones (DMP,TMP,EDMP:以下P-mix) が、マウスのみならず、エゾシカに対しても効果を発揮するか否かを検討した。その結果、仮設給餌スペースにP-mixを発生させると、エゾシカに対して明らかな忌避行動を引き起こし、餌場へ接近するシカの頭数を有意に減少させた。ビデオ記録の詳細な解析結果よりP-mixは尾立行動、逃避行動、飛び退き行動などの恐怖誘発を裏付ける行動を、有意に増加させることを解明した。この様な一連の警戒行動は1ヶ月後に同様の実験を行っても再現され、P-mixの恐怖誘発性は継続的であることが示唆された。また逃避行動、飛び退き行動は特に雌で強く表れることが確認された。以上の結果は、P-mixが有蹄類に対してもkairomonesであること示しており、特定のkairomonesが種を超えて恐怖誘発作用を発揮することを世界に先駆け証明したといえる。 ②P-mix類似物質の恐怖誘発性構造活性相関の確認 P-mixはいずれもアルキルピラジン類の化合物である。アルキルピラジンの合成品を用いてマウスの恐怖誘発作用に対する構造活性相関を検討した。その結果、P-mixの以外に2種類の恐怖誘発作用を発揮する化合物が新たに見出された。これらのうち、2,3-DEPは最も強い恐怖誘発性物質であった。今後は体温変化やコルチコステロンの変化など様々なパラメーターについて検討してゆく予定である(論文準備中)。 ③P-mixの嗅覚中枢に対する作用 P-mixのマウスの嗅覚刺激により、中枢経路に引き起されるFos陽性細胞密度の測定を実施中であり、今後詳細を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
26年度までの研究で、P-mixはマウス以外の哺乳動物においても恐怖誘発作用を引き起こすことを詳細に検討し、エゾシカにおいて詳細な結果を得ることが出来た。本研究は同一のkairomonesが異なる種の被食動物に効果を発揮したことを明らかにしており、学問的にも注目に値する内容であるとともに、食害が深刻となっているエゾシカに効果を発揮したという点で波及効果も期待できる。本研究内容はすでに論文として採択され(osada,K. et al. Frontiers in behav Neurisci,8,276,1-7 2014),関連特許も公開されている。 また構造活性相関の研究も進捗し、恐怖誘起作用を持つアルキルピラジンの官能基の特徴が明らかにされつつあり、論文もほぼ書き上げ投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1)エゾシカ以外の哺乳動物に対するP-mixの恐怖誘起作用の確認、2)ピラジン化合物の不動時間以外の生理学的作用との関係、3)P-mixを始めとする恐怖誘起作用のあるアルキルピラジン類により中枢で引き起こされる恐怖誘発作用の生理学的機構の解明などを行う。
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Causes of Carryover |
免疫抗体法の条件設定などに時間を要したため、実施内容の一部が次年度にずれ込むことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫抗体実験用キットおよび各種試薬の購入、実験実施のための旅費などに使用予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Soft-diet feeding impaired neurogenesis in the subventricular zone and olfactory functions.2014
Author(s)
Utsugi, C., Miyazono,S., Osada, K., Sasajima, H., Noguchi, T., Matsuda, M. and Kashiwayanagi, M.
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 9, e97309
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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