2015 Fiscal Year Research-status Report
成長期からの潜在的亜鉛欠乏が精神発達・気分障害に及ぼす影響
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26450149
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 知子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00342783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 亜鉛欠乏 / 成長期 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では近年、食生活の偏りなどにより潜在的な亜鉛欠乏が増えているといわれている。必須微量元素の1つである亜鉛が欠乏すると、食欲不振、成長遅延などを引き起こすことが知られている。また臨床的には、うつ病患者で血清亜鉛濃度が低下していること、うつ病患者の症状が亜鉛欠乏で進展することが報告された。注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもで血清亜鉛濃度が低いこと、自閉症の症状を有する日本人の子ども(特に0~3歳)で毛髪中亜鉛・マグネシウム濃度が低いことも報告された。そこで、成長期からの潜在的亜鉛欠乏が精神発達・気分障害に及ぼす影響を明らかにするため、ラットを用いて以下を検討した。(1)グルココルチコイド分泌に及ぼす影響: うつ病患者では、脳内セロトニン分泌低下、副腎皮質からのグルココルチコイド分泌増加が報告されている。そこで、SD系雄ラットに実験食(亜鉛欠乏食、低亜鉛食、亜鉛添加食)を28日間給餌し、血漿コルチコステロン濃度を測定した。その結果、血漿コルチコステロン濃度は全ての群で同程度であった。(2)脳内亜鉛濃度に及ぼす影響:SD系雄ラットに実験食を6日間給餌し、脳脊髄液中・脳組織中亜鉛濃度を測定した。その結果、脳脊髄液中・脳組織中亜鉛濃度(6日目)は群間で差が認められなかった。(3)スクロース嗜好性に及ぼす影響:ラットにおけるスクロース嗜好性は、本来「快」として高値を示すが、うつ症状の無欲により低下すると報告されている。そこで、SD系ラットへ実験食を給餌し、スクロース嗜好性を経日的に追跡した。その結果、(マルトースに対する)スクロース嗜好率は、亜鉛欠乏食・低亜鉛食給餌6日目より有意に低下し、その後は有意な低値を維持し、亜鉛添加食給餌により上昇した。ADHDモデルとされるSHR(高血圧自然発症ラット)における(マルトースに対する)スクロース嗜好率は両群とも同程度に低値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した、平成27年度の研究実施計画については、「潜在的亜鉛欠乏が脳内BDNF分泌に及ぼす影響」を遂行できなかったが、それ以外は概ね遂行することができたと考えており、「おおむね順調に進展している」と考えている。しかしながら、「潜在的亜鉛欠乏がグルココルチコイド分泌や脳内亜鉛濃度に及ぼす影響」を検討した結果を踏まえ、経日変化を追跡する必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)潜在的亜鉛欠乏ラットにおける脳内モノアミン分泌:うつ病患者では脳内セロトニン分泌の低下が報告されている。昨年度は、亜鉛欠乏食給餌4日目の視床下部外側野(LH)におけるセロトニン分泌が低下傾向を示すことを明らかにした。そこで、脳内の他部位におけるモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン)分泌をマイクロダイアリシスを用いて検討する。 (2)潜在的亜鉛欠乏ラットにおけるスクロース嗜好低下と自発行動量低下の関連性:これまでの検討より、亜鉛欠乏食給餌により自発行動量の低下、(マルトースに対する)スクロース嗜好性の低下が認められ、うつ様行動を示すことを観察した。そこで、亜鉛欠乏食・低亜鉛食給餌におけるスクロース嗜好を追跡する際、同時に自発行動を記録し、うつ様行動との関連性を探る。また、亜鉛欠乏食・低亜鉛食給餌後に亜鉛添加食を給餌し、スクロース嗜好と自発行動量の変化を検討する。 (3)うつ病モデルラット(社会敗北ストレス負荷)への亜鉛強化が症状の改善に及ぼす影響:ラットに、より体の大きなラットと10日間ほど連続で接触させるストレス(社会敗北ストレス)を負荷すると、約半分のラットがその後も長期間、他のラットとの接触を回避するようなうつ様行動が出現し、うつ病モデルとなることが報告されている。この社会敗北ストレス負荷によるうつ病モデルラットを用い、亜鉛強化、亜鉛マグネシウム同時強化などが症状に及ぼす影響を追跡する。症状の評価として、自発行動量、スクロース嗜好性を検討する。
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Causes of Carryover |
交付申請書に記載した平成27年度の研究実施計画で遂行できなかった項目(脳内BDNF分泌)があったことから、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
血漿・脳脊髄液中BDNF(脳由来神経栄養因子)濃度をELISA法にて測定するため、ELISAキット(@86,000円×3 など)を使用する予定である。その他の物品費、旅費、人件費・謝金、その他については、申請時の計画どおりと考えている。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Properties of Zip4 accumulation during zinc deficiency and its usefulness to evaluate zinc status: a study of the effects of zinc deficiency during lactation2016
Author(s)
Ayako Hashimoto, (Miki Nakagawa, Natsuki Tsujimura, Shiho Miyazaki, Kumiko Kizu, Tomoko Goto, Yusuke Komatsu, Ayu Matsunaga, Hitoshi Shirakawa, Hiroshi Narita, Taiho Kambe, Michio Komai)
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Journal Title
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.
Volume: 310
Pages: R459-R468
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 海洋深層水により浄化したカキの栄養成分分析2015
Author(s)
海老澤和毅、(後藤知子、白川仁、鷲足恭子、駒井三千夫)
Organizer
第19回 海洋深層水利用学会 全国大会 海洋深層水2015久米島大会
Place of Presentation
久米島町具志川農村環境改善センター(沖縄県久米島町)
Year and Date
2015-11-12 – 2015-11-13
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