2014 Fiscal Year Research-status Report
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26450236
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
板倉 修司 近畿大学, 農学部, 教授 (60257988)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シロアリ制御技術 / 生物学的昆虫駆除法 / RNA干渉 / 摂食法 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA干渉を応用したシロアリ駆除技術の開発を目的とし、遺伝子組換え大腸菌による2本鎖RNAの大量生産に取り組んだ。標的配列としてヤマトシロアリのヘキサメリン遺伝子(Accession No. AB371986)を選定した。ヘキサメリン遺伝子から19 塩基対からなる短鎖配列(2273-2291塩基)と583塩基対からなる長鎖配列(637-1219塩基)をRNA干渉の標的配列として決定した。 長鎖標的配列DNAはPCRにより調製した。ヤマトシロアリから抽出したmRNAから得たcDNAを鋳型とし、長鎖標的配列を増幅するforwardプライマー上流側に制限酵素Sac IIの認識配列を、reverseプライマーの上流側に制限酵素Hind IIIの認識配列をそれぞれ付加したプライマー対を用いて、PCRによりヘキサメリンの部分配列を増幅した。 一方、短鎖標的配列DNAは化学合成法により調製した。具体的には、19塩基からなる短鎖標的配列のセンス鎖上流側にSac IIの認識配列を付加した1本鎖DNAと、アンチセンス鎖の上流側にHind III認識配列を付加した1本鎖DNAを、アニーリングすることで短鎖標的配列を含む2本鎖DNAを得た。 次に、これらの制限酵素認識配列を付加した長鎖および短標的配列DNAをpGEM-T Easyベクタープラスミドとそれぞれライゲーション(連結)し、大腸菌JM-109株の形質転換体を調製した。これらの形質転換大腸菌を培養しプラスミドを精製した。 これらの標的配列DNAをもつプラスミドと、マルチクローニングサイトの両端にT7 RNAポリメラーゼ認識配列をもつL4440プラスミドを、それぞれ制限酵素Hind IIIとSac IIで同時に処理した。その消化産物を精製したのち、ライゲーションした。これらのプラスミドを用いて、大腸菌BL21 (DE3)株の形質転換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画で、平成26年度に予定していた(1)RNA干渉によって遺伝子発現量を抑制する標的遺伝子の決定、(2)標的遺伝子の塩基配列から約20塩基長の短鎖配列と約500塩基長の長鎖配列の選定、(3)標的配列2本鎖DNAの両末端への制限酵素認識配列の付加、(4)制限酵素認識配列を付加した標的配列DNAとマルチクローニングサイトの両端にT7 RNAポリメラーゼ認識配列をもつL4440プラスミドとの融合、ならびに(5)融合プラスミドによる大腸菌BL21 (DE3)株の形質転換まで完了した。 平成27年度に予定した形質転換大腸菌による2本鎖RNA生産実験に着手することができた。IPTG(イソプロピルβ-チオガラクトピラノシド)を対数増殖期にある形質転換大腸菌の培地に添加し、標的配列のセンス鎖の上流側とアンチセンス鎖の上流側から同時に1本鎖RNAをそれぞれ合成させた。これらの1本鎖RNAはお互いに相補的な配列であるため大腸菌内で自動的に2本鎖RNAを形成すると予測される。これまでの予備実験では宿主大腸菌がもつ2本鎖RNA分解酵素RNase III阻害剤を添加していないので、当然ではあるが2本鎖RNAの存在は確認できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度中に2本鎖RNAを発現させるためのプラスミドを含む形質転換大腸菌BL21(DE3)株を作成した。今年度は、宿主大腸菌内に存在する2本鎖RNA分解活性をもつRNase IIIの阻害剤を添加し、大腸菌内での2本鎖RNAの合成を試みる。 SDS(sodium dodecyl sulfate)、DEPC(diethylpyrocarbonate)、Mg2+などのRNase阻害剤を組換え大腸菌の培養液に添加することで、RNase IIIを阻害し、目的の長さをもつ2本鎖RNAを大腸菌内に蓄積させることができるか検討する。 なお、RNasin(Promega)やSUPERase・InTM RNase Inhibitor(Life Technology)などのRNase阻害剤は、RNase A、 B、 Cなど1本鎖RNA分解活性をもつRNaseの阻害剤であり、また、これらの阻害剤自体がタンパク質であるため宿主大腸菌細胞膜を通過できないと考えられ、本研究での使用には適していない。同様に、RNase阻害剤として知られるヘパリンは多糖であるため大腸菌細胞膜を通過して作用することは困難であると予測され、宿主大腸菌内で2本鎖RNAを合成させる本実験では適していない。 RNase IIIの阻害実験が上手くいかない場合は、2本鎖RNA実験で頻繁に用いられるRNase IIIを欠損させた大腸菌HT115 (DE3)株による2本鎖RNA合成の検討を予定している。 またRNase III阻害剤を添加せずに形質転換大腸菌を培養し、大腸菌内に生成した目的配列をもつ長鎖2本鎖RNAを大腸菌由来のRNase IIIにより消化させ、その消化産物(12-15 塩基長の2本鎖RNA小断片)を、注入法あるいは摂食法でシロアリ体内に導入し、RNA干渉がシロアリ体内で機能するかどうか、その効果についても検討を予定している。
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Research Products
(1 results)