2015 Fiscal Year Research-status Report
きのこにおけるGABA生合成の解析とGABA強化機能性きのこ栽培への応用
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26450237
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
白坂 憲章 近畿大学, 農学部, 教授 (20268452)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グルタミン酸脱炭酸酵素 / フォスファチジルセリン脱炭酸酵素 / GABA / シイタケ / マイタケ / エノキタケ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までに、マイタケ(Grifola frondosa)・エノキタケ(Flammulina velutipes)およびシイタケ(Lentinula edodes)のGABA生成に関与する酵素の精製を進め、マイタケ、シイタケににおいては精製酵素を、またエノキタケにおいては部分精製酵素を得た。これらの性質はマイタケとエノキタケはL-グルタミン酸にのみ作用し脱炭酸を触媒するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)であることを確認したが、シイタケの酵素はL-グルタミン酸以外にもL-アスパラギン酸などの炭素数の異なるα-アミノ酸にも作用するGADとは異なる酵素であり、精製酵素のアミノ酸配列解析の結果から、フォスファチジルセリン(PS)脱炭酸酵素(PSD)であることが示唆された。データベース上の情報をもとにcDNAクローニングにより該当する遺伝子を得たのち、種々の異種遺伝子発現系による発現解析を試みたが、現在までのところ発現には至っていない。シイタケの酵素については現在PSD活性を検出するための実験系の確立を進めており、シイタケにおけるGABA生成酵素がPSD活性を有するか否かを確認していく。 一方、マイタケ由来の酵素については得られたアミノ酸配列情報をもとにBLAST検索を行っても相同性70%を越えるタンパク質はヒットしないものの、マイタケGADのN末端アミノ酸配列情報と高い一致が見られたため、シイタケ酵素の遺伝子配列情報をもとにクローニングを試みたが、現在まで目的の遺伝子の取得には至っていない。現在、マイタケの全ゲノム解析を進めており、得られた情報をもとに酵素遺伝子のクローニングを進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにほとんど情報のなかった食用きのこのGABA生成にかかわる酵素としてマイタケ、エノキタケ以外にシイタケ由来の酵素を単離し、精製酵素のアミノ酸配列情報より、本酵素がグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)ではなくフォスファチジルセリン脱炭酸酵素(PSD)である可能性を示した。しかし、本遺伝子の発現系の確立には至っておらず、PSD活性の検出にも至っていない。また、シイタケ酵素の遺伝子配列情報をもとに設計したプライマーによってもcDNAクローニングには至っていない。また、部分精製状態のエノキタケ酵素においても酵素の可溶化条件が確立できず完全精製には至っていない。当初の計画では平成27年度末にはこれらの酵素についてはすべての遺伝子クローニングまでが終了している予定であったため、遅れていると言わざるを得ない。しかし、一方でエノキタケ、マイタケの全ゲノム情報の解析を進めており、ゲノム情報が利用できるようになるとともに、遺伝子クローニングが可能になると考えられ、平成28年度、遅れを取り戻すことは十分に可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、シイタケのGABA生成にはリン脂質代謝に関するPSD遺伝子がコードする酵素が関与する可能性が明らかになったが、現在のところ本遺伝子の石遺伝子発現には成功していない。今年度は引き続き、本遺伝子の酵母や担子菌を用いた発現系を検討し、発現を試みる。また、シイタケより精製した酵素を用い、本酵素がPSD(PSの脱炭酸)活性を有するかについても新たに導入された好感度分析装置(MALDI-TOF/TOF)などを用いて検討を進める。これらの問題の解決と並行して、シイタケでのGABA蓄積と本遺伝子の発現との関係についても検討を進めていく。一方、マイタケ由来のGADについてはマイタケの全ゲノム情報解析を進め、得られたゲノム情報をもとに酵素遺伝子のクローニングを進めるとともに、シイタケと同様に異種遺伝子発現および発現量とGABA量との関係についても検討を進めていく。 また、現状では部分精製の状態であるエノキタケについては、部分精製酵素を試料としてタンパク質のアミノ酸配列情報解析を行い、新たに得られたエノキタケ全ゲノム配列情報をもとに関連遺伝子のクローニングを行い、シイタケ、マイタケと同様の検討を進めていく予定である。
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