2015 Fiscal Year Research-status Report
干潟域における再生可能な二枚貝水管のカレイ類生産への貢献度評価
Project/Area Number |
26450246
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冨山 毅 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (20576897)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 水管再生 / アサリ / イシガレイ / マコガレイ / 成長阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
カレイ類の生産性を評価する上で重要となる摂食量の推定を行った。干潟域において24時間連続採集により得られたイシガレイ稚魚の標本分析を行い、以下のことを明らかにした。①イシガレイ稚魚は主に日中、特に日没前に最も活発に摂食していた。②空胃状態の個体は、夜間においても摂食を行う場合がみられた。③稚魚は体重の3~13%を一日に摂食していた。さらに、異なる水温条件下における全長約50mmのマコガレイ稚魚の飼育実験を行い、水温20度において最も摂食量および成長量が大きくなることを明らかにした。 二枚貝の水管の生産性を評価するため、既往知見を整理した。イソシジミのように分離して長く伸張する水管を有する二枚貝では、水管の日間再生速度は約1~3%であった。一方、アサリのように水管が癒合して長く伸張しない二枚貝については知見がなかったため、アサリを用いて水管を人為的に切除する現場実験を行った。その結果、アサリでも水管を量的に再生させること、しかし日間再生速度は約0.2%と小さいことが明らかとなった。水管を長く伸張させる二枚貝では、深く潜砂することで鳥などによる直接的な捕食から免れるため、水管の量的再生は極めて重要であるのに対し、アサリのような二枚貝では、元々潜砂深度が浅いため、量的な再生があまり重要ではないことが考えられた。 以上から、カレイ稚魚の生産特性および二枚貝水管の生産特性の一端を明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二枚貝の水管の再生に関して新たな知見を得られたこと、イシガレイ稚魚の摂食活動の日周性や摂食量を推定したこと、さらにこれらの成果をそれぞれ学術論文として公表できたことから、おおむね順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
広島湾の干潟において、カレイ類稚魚の採集と胃内容物の分析を行う。また、水温に対する成長の応答を調べる飼育実験を、体サイズの異なるカレイ類稚魚で実施し、成長とともに至適水温がどのように変化するか、摂食量がどのように変化するかを明らかにする。これらを通して、野外でカレイ類が摂取する食物量と二枚貝水管の割合および二枚貝への影響評価を推定する。
|
Causes of Carryover |
調査や国際学会の際に同行予定であった研究協力者が別の予算で出張できたこと、現場実験の内容を変更したため遠隔地への出張回数が大きく減ったこと、などによる
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会等で積極的に成果を公表するとともに、より高い精度での成果が得られるように実験等を追加するなど、主に旅費として使用予定。
|
Research Products
(3 results)