2014 Fiscal Year Research-status Report
希少種カワシンジュガイの保全に向けた水産業の活用-水産業の持つ多面的機能の評価-
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26450260
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 健吾 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (10303512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 吉寛 国土技術政策総合研究所, 沿岸海洋・防災研究部, 研究官 (20532401)
近藤 高貴 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50116159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カワシンジュガイ / 水産業 / 寄宿種 / 幼生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に予定していた養魚場における希少種カワシンジュガイ増殖のメカニズム解明に関する研究項目4点についての進捗状況は以下のとおりである。 ①養魚場への幼生供給源となる母貝集団の特定:養魚場上流約2.5kmの農業用水路の暗渠内において、数十個の個体群を発見した。しかし、それらの個体群よりも上流に位置する自然河川内の個体群は未だ発見されていない。引き続き自然河川内での踏査を続けていく。 ②幼生の流下量と活性の評価:プランクトンネットによる採捕を試みたが、確認できなかった。これは本種の幼生放出が他のイシガイ目と比較して短時間に行われるため、時期を逸したと考えられる。放出時期の予測は困難であるため、宿主アマゴを入れたゲージを数カ所に設置し、その寄生量を評価する方法に切り替え、ゲージを設置する。 ③寄宿種の種類と寄生状況:養魚場内で飼育されている4魚種の寄生状況を確認した。イワナ、ヤマイワ(ヤマメ♀×イワナ♂)には規制が確認できなかった。一方、宿主として知られているアマゴには寄生が確認できた。ニジマスは寄生はしたものの、2週間程度で鰓組織に吸収されて消失した。これより、養魚場内の宿主はアマゴのみと判明した。 ④脱落稚貝の分布状況:底礫の間隙に納まる小さな個体は上流に位置しており、大きく成長するにつれて下流へと流されていることが明らかになった。成熟個体を養魚場などのコンクリート水路で上流部にとどめておくためには、底質に配慮する必要があることが示唆された。 以上の結果、予定していた研究はおおむね遂行することができた。これらの結果および引き続き行われる調査結果から、養魚場を積極的に活用して本種を保全していくための問題点を精査することが可能と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査研究は多岐にわたるが、各項目においてほぼ予定通りに計画は遂行されている。一方、グロギディウム幼生の流下については確認できなかったが、アマゴトラップ法を新たに採用して対処することとした。 平成26年度は基礎的なデータ収集が主となっていたが、本年度よりそれらのデータを活用しながら、寄生実験をはじめとした各種データ収集に移行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定は、計画通り以下の内容に沿って行っていく。 水産業を活用したカワシンジュガイ保全に関する効果の検証と課題の抽出:①カワシンジュガイの再生産に活用できる可能性を持った養殖池の抽出:本調査地に近い環境を持つ全国の養魚場をリストアップし、今後、水産業の多面的機能として希少種の保全に寄与できる施設を展開していく基盤づくりを進める。②寄生による魚体への影響評価:養魚場の生産物である養殖魚に対し、本種幼生の寄生が及ぼす影響を明らかにし、その許容範囲を検討する。そのため、現在、寄生量の異なる4群計500尾のヤマメを用いた実験を準備している。この結果は平成27年度中に得られる予定である。③カワシンジュガイの野生復帰:過去の文献において本種の生息が確認されている近隣の支川において、野生復帰のための方針を定めていく。そのため、現在の対象支川において本種が生息可能かどうかを判断するため、現場でのゲージ飼育を行い、その体重変化を測定する。また、宿主アマゴの生息状況を把握し、継続的な再生産の可否を検討する。
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Causes of Carryover |
調査(グロギディウム幼生の流下確認)の一部に変更が生じ、次年度に新たな手法を用いて行うこととしたため、助成金の仕様を一部繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に新たな調査を導入するため、供試魚となるアマゴの飼育、マーキングなどを行う。
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Research Products
(4 results)