2015 Fiscal Year Research-status Report
希少種カワシンジュガイの保全に向けた水産業の活用-水産業の持つ多面的機能の評価-
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26450260
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 健吾 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (10303512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 吉寛 国土技術政策総合研究所, 沿岸海洋・防災研究部, 研究官 (20532401)
近藤 高貴 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50116159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カワシンジュガイ / 養魚場 / 水産業 / 幼生 / 寄生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究対象であるカワシンジュガイは,幼生期に魚類へ寄生する必要がある。一方,寄生可能な宿主はサクラマス(アマゴ,ヤマメ)に限られており,宿主不在が本種の生息域減少要因の一つになっている。本研究では,カワシンジュガイ幼生の寄生先として養魚場内で多数飼育されているアマゴを活用することを試みた。 平成27年度は養魚場内の被寄生魚に対する幼生寄生の影響,養魚場下流域のカワシンジュガイ個体群の殻長分布解析,それに他水域において,宿主禁漁措置によるカワシンジュガイ個体群への影響評価を行った。 幼生寄生による宿主魚への影響を評価するため,寄生実験を行った。現状の寄生数は宿主一尾あたり72個体程度であるが,十分な稚貝の生産能力を有している。一方で実験により250個/尾程度の寄生数では被寄生魚の生残率及び成長率には全く影響がないことを明らかにした。 養魚場下流個体群の殻長分析を調査した結果,各年級群が正常に生息しており,順調に成長していることがわかった。一方,それらの成貝は妊卵して幼生を放出していたが,水温が25度と宿主アマゴの適温範囲を大きく超えていたために寄生先がなく,無効放出に終わっていることが示唆された。 本調査域においては,将来的に寄生期間中の宿主禁漁措置を目指しているが,先行事例のある広島県でその効果の評価を行った。その結果,宿主の保全はカワシンジュガイの増産効果に直結しており,極めて効果の高い保全手段であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
養魚場内に流入するグロギディウム幼生の供給源となっている母貝集団を特定するため,上流河川の本・支流,養魚場への導水路を踏査した。その結果,養魚場入口に位置する配水池内において58個からなる個体群を確認し,そこから放出される幼生の寄与率が高いことを確認した。一方,配水池内の個体群を移動させた場合においても規制は確認されたため,さらに上流から幼生が流下していると考えられるが,現在のところ河川内では未確認である。 養魚場下流域の個体群の殻長分布を調べた結果,本種の稚貝が毎年多く定着し,個体群の年級構造も正常に保たれていることがわかった。また,本種生息域としては極めて高音な水域であったが,成長および繁殖(幼生放出)も正常に行われていた。しかし,養魚場より下流域には高水温ゆえに宿主たるアマゴは存在せず,本個体群の幼生は無効放出となっていることが示唆された。 寄生される魚類への影響について詳細に調査を行い,現状の幼生寄生数(250個/尾)の範囲内においては,被寄生魚の生残率及び成長率には影響はないことを明らかにした。これより,水産業を二枚貝の増殖の場として活用する際の一番の懸念事項は回避された。
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Strategy for Future Research Activity |
養魚場下流域に定着しているカワシンジュガイ個体群は,成長こそ順調ではあるが,宿主アマゴの適性水温範囲を大きく超える高水温域であるために,寄生先がない状態であった。そのため,養魚場内でのアマゴ飼育が途絶えると,本種もその先減少の一途をたどることが懸念される。一方,養魚場配水池より上流からの幼生流入が確認されたことから,上流域に母貝集団が残っていることが示唆された。そのため,今後は母貝集団の位置を把握し,上流域における保全を行うことが重要である。その際,養魚場下流個体群を上流部へ里帰りさせることも検討しているが,上流域における環境収容力の評価を行い,定着の可能性について検討を行う。また,寄生魚の放流もしくは貝の移殖など,移動方法についても検討する。
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Causes of Carryover |
一部の消耗品が予定購入価格を下回った
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査サンプル数を予定よりも増やしてよりよい解析を行う
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Research Products
(2 results)