2014 Fiscal Year Research-status Report
難種苗生産魚種の飼育環境制御による革新的生産システムの開発
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26450271
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
石橋 泰典 近畿大学, 農学部, 教授 (90247966)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 仔稚魚 / 難種苗生産魚種 / 種苗生産 / 飼育方法 / 飼育環境 / 流動制御 / 光環境 / 高密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグロ類,ブリ類,ハタ類の量産が困難な難種苗生産魚種を対象に,共通して起きる摂餌不良,浮上死,沈降死等の初期減耗対策に焦点を絞って,飼育環境制御に基づく新しい種苗生産システムの開発に向けた様々な検討を行った。平成26年度は,初期減耗の防除に有効な光環境(視覚特性の魚種間比較,光強度の影響),飼育水の流動制御(水槽形状および水流発生法の影響)を検討し,以下の結果を得た。 1. 視覚特性の魚種間比較: キハダ,スマ,カンパチ,クエ等の各種オプシンタンパク質の遺伝子クローニングを行い,既報値と比較したところ,どの魚種も3種類以上のオプシン遺伝子を発現することが確認された。また,クエの網膜電図を測定し,光感度,分光応答等を既報のデータと比較した結果,クエはマグロ類より夜間の光感度が高く,幅広い光波長に適応していること等が示唆された。 2. 浮上・遊泳行動,摂餌率等に及ぼす光強度の影響: 赤外線ビデオカメラ付き小型チャンバーに2~4日齢のクロマグロ,キハダ,カンパチ等の仔魚を収容し,白色LEDの光強度に対する浮上・遊泳行動,摂餌率等の影響を調べた。その結果,どの魚種も日齢に伴って遊泳速度に変化のあること等が示された。 3. 沈降現象に及ぼす光強度の影響: 2~10日齢のクロマグロ,キハダ,カンパチ等の仔魚を小型チャンバーに収容し,光強度を変化させた時の沈降行動を解析した。その結果,魚種によっても異なるが,沈降頻度が特定の日齢以降に低下すること等が示唆された。 4. 初期減耗の発生頻度に及ぼす水槽形状および水流発生法の影響: 水槽底面の形状と水流発生法が異なる水槽にクロマグロ,キハダ,カンパチ等の仔魚を収容し,10日齢まで飼育した。その結果,丸底水槽の中央に下向き水中ポンプを設置した試験区では,底面から側壁を経由して上層に流れる循環流が形成され,仔魚の生残率が優れること等が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の各種実験は,当初計画に基づいてそれぞれ実施され,概ね良好な結果を得ることができた。具体的には,マグロ類はクロマグロ,キハダ,スマを,ブリ類はカンパチを,ハタ類はクエをそれぞれ用いて初期減耗の防除に関与する光環境,飼育水の流動制御の影響を調べた。その結果,魚種毎の光環境特性や流動制御で生残率が改善するなどの有益なデータが得られた。しかし,一部の実験項目で,実施の途中に受精卵が採取されなくなり,予定した実験がうまく実施できない魚種もあった。本申請で対象とする難種苗生産魚種の多くは,卵の採取時期が限られるため,単年度に同じ実験を繰返し検討することが困難である。これらは,次年度に再試験を実施する予定であるが,全体の中ではわずかであり,26年度の達成度は概ね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は,当初計画に基づいて,初期減耗の防除に有効な光環境と飼育水の流動制御の影響をさらに詳しく検討する。具体的には,光環境に関する研究として,各種仔稚魚の発育に伴うオプシン遺伝子の発現様式,遊泳行動,摂餌率等に及ぼす各種光波長の影響を調べる予定である。また,飼育水の流動制御に関する研究では,沈降死発生頻度等に及ぼす流速の影響を詳しく検討し,水槽底面付近で最低限必要な飼育水の流速を魚種毎に求める予定である。両研究項目ともに当初の計画通りで,その方策に大きな変更はない。26年度に受精卵が不足してうまく実施できなかった魚種については,27年度以降に光強度の影響,水槽形状および水流発生法の影響を再検討する予定である。また,27年度も受精卵の採取状況に偏りが生じた場合は,安定的に卵が入手できた魚種の28年度計画を前倒しで実施する方策を取る。
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Causes of Carryover |
26年度の計画当初に予定していた実験対象種の受精卵の一部が,実施の途中から採取できなくなったため,その実験に関わる各種経費が予定よりも少なくなった(26年度予算全体の1割程度)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
受精卵が不足して26年度にうまく実施できなかった魚種の実験は,全体の一部であるため,27年度に再度実施する予定である。それに関わる経費は,27年度に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)