2014 Fiscal Year Research-status Report
川を降るサケ科魚類の行動と耐病性をホルモンで繋ぐ:放流種苗特性評価への展開
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26450296
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
矢田 崇 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, その他 (80372043)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 / オレゴン州 / 行動 / 脳神経系 / 免疫系 / 内分泌系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人工種苗の天然環境への適応を巡る、行動特性(脳・神経系)・耐病性(免疫系)・ホルモン(内分泌系)の相互作用という観点から、放流後の個体の生残に影響を及ぼす要因を、包括的に把握することを目的とする。降河期のサケ科魚類(スモルト)について、降河行動と耐病性の制御機構を解明することにより、天然種苗に遜色のない、環境への適応能の高い種苗を生産する技術の構築に資する。さらに、生息場所の移動を伴うサケ科魚類特有の生活史を考慮することにより、資源管理技術のさらなる高度化を目指す。 初年度は、行動パターンの異なるサケ科魚類を用いて、次年度以降の遺伝子発現解析に供するための試料採取を、脳神経・免疫系を中心に実施した。増養殖研究所日光庁舎で飼育しているニジマスとスチールヘッドトラウトを用い、濁りに対する行動実験を実施し、脳・脾臓の試料を採取、遺伝子発現解析に供するための核酸試料の調製を行った。併せてアメリカ西海岸の研究協力者の下、行動パターンでタイプ分けされたマスノスケを用い、温度低下に対する行動実験を実施し、同様の試料採取と核酸試料調製を行った。マスノスケでは試行的に、脳および脾臓でのホルモン受容体の遺伝子発現量を測定したところ、水面近くに定位する群では、水底に定位する群よりも高い数値を示す事例が複数見られた。また培養下の白血球を用いて、ホルモンに対する反応性を確認し、実験条件の検証を開始した。 次年度はニジマス・スチールヘッドトラウトで採取した試料の解析を進めると共に、マスノスケにおいても行動実験を実施し、実際に反応の異なる個体間の比較を開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の研究協力者との実験を前倒しに実施し、複数箇所での事例を比較できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験とそこで採取される試料、特に脳神経系の解析に重点を置く。 免疫系については個体レベルの解析結果を踏まえた上で、細胞培養によるポイントを絞った実験を進める。
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Causes of Carryover |
計画より安価なポータブル仕様の機器を購入したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外研究協力者との実験実施に重点を置くと共に、解析する遺伝子の数を増やし、より詳細な解析を試みる。
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