2014 Fiscal Year Research-status Report
ナマコ類の成熟を調節する内分泌カスケードの解明:グローバル資源の回復に向けて
Project/Area Number |
26450297
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
山野 恵祐 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, センター長 (10372020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 篤志 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, その他 (30443352)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナマコ / 成熟 / 繁殖生態 / 内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年、マナマコも含めてナマコ類16種(在来6種)が絶滅危惧種として国際自然保護連合レッドリストに登録され、ワシントン条約会議(COP16, 2013)でも関係各国にナマコ類資源保全の取り組みを推進する旨の勧告が出された。本研究実施者らはこれまでにマナマコでは産卵誘発ホルモン(クビフリン)を発見し、これを用いた産卵誘発方法を確立した。この手法はマナマコ種苗生産の効率化に大きく貢献している。しかしマナマコ以外のナマコ類におけるクビフリンの存在やその産卵促進作用などについてはほとんど分かっていない。本研究ではマナマコでの研究成果を発展させて、種々のナマコ類の成熟過程を明らかにするとともに、ナマコ類の成熟を調節する内分泌カスケードを解明する。 平成26年度の実施計画では、循手目クロナマコ科、シカクナマコ科を対象として、成熟状態の調査を行い、成熟サイズ、生殖腺発達の特徴等の概要を把握する。また循手目ナマコ10種程度からクビフリン遺伝子の塩基配列を決定し、演繹アミノ酸配列からクビフリンの構造を推定する。 奄美海域において、クロナマコ科2種(クリイロナマコ、フタスジナマコ)、シカクナマコ科2種(シカクナマコ、ヨコスジオオナマコ)の生態調査を4回(3月、5月、7月、11月)行った。その結果、クロナマコ科2種の産卵期は5-7月、シカクナマコ科2種の産卵期は7-11月にあると推測された。クロナマコ科5種、シカクナマコ科2種のクビフリン遺伝子をクローニングした結果、調べた全ての種がクビフリン遺伝子を保有していた。その演繹アミノ酸配列から、いずれも1分子の前駆体タンパク質から5分子のクビフリンが産出される構造となっていることが推定され、種間で極めて高い類似性を保持していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナマコ類の生態調査については、シカクナマコ科、クロナマコ科のナマコ類を2年間調査し、科毎にその特性を類型化することを目標としているが、それぞれの科から2種の対象種を定めることができ、順調に調査を開始することができた。概ね2ヶ月おきに実施した繁殖生態調査の結果、これらの種の繁殖周期の概要をつかむことができた。しかし調査海域は台風の襲来が多い地域のため、平成26年度の調査においても1回中止せざるを得なかった。調査で得た生殖腺サンプルについては組織学的観察を実施する予定であったが、解析機材の調整が間に合わなかったため次年度に持ち越しとなっているが、今後の研究推進上において、大きな問題は無い。クビフリン遺伝子の解析についても順調に結果が得られている。以上のことから概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
クロナマコ科、シカクナマコ科ナマコ類の繁殖特性を明らかにするために、継続して奄美海域において4種のナマコ類の生態調査を実施する。平成26年度は2ヶ月おきに調査を実施したが、その調査結果を基に産卵期を中心に4週間おきの調査を実施する。また両年度の調査で収集した生殖腺サンプルの組織学的な観察を行い、生殖腺の発達過程を調べる。またクビフリン遺伝子のクローニングをさらに広範な種で実施し、種間での類似性を詳細に明らかにする。卵成熟誘起アッセイを用いた実験的な手法で、クビフリンや卵巣内の因子の、種々のナマコ類における卵成熟誘起作用の有無やこれらの因子の種交差性を調べる。
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Causes of Carryover |
台風襲来による天候不順のためにナマコ類の生態調査を1回中止した。また組織学的解析の機材の準備が整わなかったために、予定していた必要な試薬類、消耗材などの購入を見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度予算については、主に生態調査に係る旅費および組織学的な解析に必要な消耗品類に使用する。生態調査では、より詳細に繁殖生態を明らかにするために、産卵期を中心に昨年度より短い周期(4週間おき)で調査回数を増やす。組織学的な解析は、2年分のサンプルを用いて行い、必要な試薬類、消耗資材類を購入する。これらのために次年度使用額と平成27年度所要額を合わせて使用する。
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