2016 Fiscal Year Annual Research Report
Agricultural vulnerability and adaptation potential to climate change in developing countries
Project/Area Number |
26450306
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (90292672)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気候変動 / 脆弱性 / フィリピン / 農家調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず前年度に行った農家調査のデータを用いて、調査地域での自然災害の特徴、緩和策の普及状況、被災圃場で再度作付けが出来るまでの期間(回復期間)の差異について検討した。干ばつ被害に遭った農家は全体の3割程度で水害の7割より大幅に少なく、風害は病虫害(対照項目として調査)と同様にほぼすべての農家が経験していた。農家が経験した最大の被害率(発生頻度をウエイトとして算出)に農家属性などで回帰したところ、地域差が大きいこと、女性世帯主や高齢者が多い世帯で被害が大きくなりやすいこと、地形や地質の影響を受けること等が統計的に示された。 年度後半では、比国は風水害が主たる農業被害の原因であったことを考慮し、アフリカにおける干ばつ被害についての調査を行った。調査対象地域は、調査基盤が既に成立している中部セネガルのカオラック州とした。カオラック州を構成する3県について、人口データが入手可能で各県総人口の10%以上の規模を有する村を対象に、比例確率抽出により8郡を選出した。次に、村の人口をウエイトに12村を選び、最後にその12村の農家リストから12名の農家をランダムに抽出した。農家が最も頻繁に遭遇しているのは予想通り干ばつ被害であったが、病虫害、風害、水害の遭遇頻度も比較的高かった。最大被害率のサンプル平均よりも最大被害率が大きい農家を脆弱な農家として定義し、どの様な要因が影響を与えているかについて検討した結果、地域性や世帯主属性による違いはあまりみられないが、世帯属性では、居住年数と世帯員数に有意な負の影響がみられた。 本研究により、農家の自然災害に対する適応能力を向上させうる社会経済的要因の存在が明らかになったが、他方で、被害の大きさが必ずしも回復期間の長さを意味しないという傾向も見出された。今後は、被害の低減と回復力の向上を同時に可能にする政策的要件について検討を深める必要がある。
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