2014 Fiscal Year Research-status Report
途上国農村における農村共有資源の維持管理に関する研究
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26450326
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40178413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 灌漑システム / インドネシア / 公共財 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシア、中部ジャワ州、クドゥス県、ウンダアン郡の複数の水利組合を対象として、水利施設の建設や維持管理の供給メカニズムを明らかにすべく実態調査を行った。農家に灌漑水を供給するには、水利組合が配水調整や水路の維持管理の機能を果たすことが重要となる。配水調整や水路の清掃、水利施設は、これらの費用を負担しない誰でもがその便益を享受できるため、公共財としての特質を有している。公共財の供給には、フリーライダーが生じやすく、農民にはこのような公共財を自発的に供給するインセンティブが欠如している。公共財の供給を農民に任せておいたのでは、常に過少供給に陥る。調査対象水利組合では、水利組合長が農家への水分配や清掃活動を担っていた。また、水利施設の建設の投資費用は、水利組合長を選出するオークションでの入札金によって賄われていた。村の水路などインフラ整備に最も多額の資金を拠出する者が水利組合長に選出されるのである。それと引き換えに水利組合長は受益者から水利費を徴収する権利を有するため、水利費はオークションの際の提示金額の原資となっているのである。組合長は、灌漑水を組合員へ供給し、それによって農業生産力が高まれば、問題なく水利費を徴収することが可能である。この制度のもとでは、組合長は自らの利益最大化を目的に公共財を供給するのである。すなわち、分析対象水利組合には公共財供給に関して誘因両立性が備わっていた。農村共有資源の管理をうまく遂行するための1つのモデルと位置付けられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシア、中部ジャワ州、クドゥス県、ウンダアン郡の複数の水利組合を事例に、水利施設の建設や維持管理の供給メカニズムを明らかにすべく調査を行った。ネパールにおいてもいくつかの調査地を選定し、予備的情報の収集に努めている。ただし、制度変化に伴う農民の期待費用や長期の費用の推計に関しては難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
インドネシアの事例水利組合について、水利組合長や組合員に対してより詳細なインタビューを行うことである。インドネシアやネパールについてどのようなメカニズムによって制度が変化してくるのかを明らかにする。灌漑システムにアプロピリエーションとプロビジョンの2つの視点から灌漑制度のパフォーマンスを分析する。
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Causes of Carryover |
26年度にカトマンズ近郊農村の灌漑システムの調査を予定していたが、近郊農村において国内移民によるトマトなどの野菜栽培が急速に普及していた。乾季におけるこれらの野菜栽培での灌漑がどのようになされているかを明らかにするために計画を変更し農村調査を実施した。重下式灌漑システムの調査については次年度に行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、ネパールの灌漑システムの調査は次年度に行うことにし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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Research Products
(3 results)