2016 Fiscal Year Research-status Report
途上国農村における農村共有資源の維持管理に関する研究
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26450326
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, 農学研究院, 教授 (40178413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業水利 / 制度変化 / インドネシア / インフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシア、中部ジャワ州、クドゥス県、ウンダアン郡のシドマクムール水利組合における水利施設の維持管理に関する制度変化について調査した。調査対象水利組合ではスワクロラからレランという水利制度の変化が確認された。 平成28年度では、調査対象を一水利組合だけではなく、スワクロラからレランという水利制度の変化を把握するために流域全体の水利組合を対象に調査を実施した。灌漑システム流域には約40の水利組合がある。今回、調査対象となったのはそのうちの34の水利組合である。これらの水利組合が管理する灌漑面積は5140haである。レランを採用している水利組合は34のうち22であり普及率は65%であった。面積でみた普及率は78%となる。 レランが考案されたのは2003年であるが、2年後の2005年には12件、レラン制度を採用している。レランを採用する12の水利組合の組合長がオークション時に支払った落札金の平均は2億3千万ルピアであった。この額は中部ジャワ州の平均的な農家の農家所得の10倍に相当しており、平均的な農家経営者が組合長になることは容易ではないことが明らかになった。レランを採用する22の水利組合のうち18の水利組合がインフラ投資の資金を確保するためにレランを採用しており、前年度の調査対象であったシドマクムール水利組合がレランを採用した理由と同様であった。レランが採用される理由はインフラ投資資金を確保するためであった。 一方、スワクロラを採用し続ける水利組合に対しても調査を行った。スワクロラシステムでは投資資金の確保が困難であると考えられるが、シドマクムール水利組合が属する村に隣接するワドゥックレジョ水利組合ではスワクロラシステムが採用され続けていた。彼らは水利施設の維持管理費用と水利費徴収額を正確に記録し各年でインフラ投資資金を積み立て資金を確保していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の調査では灌漑システム流域の一水利組合の水利制度を扱ったものであったが、今年度ではより一般的な状況を把握するために流域の水利組合を対象に調査を行うことができた。これによりレランという水利制度の普及が支配的であることが明らかとなった。また同時に、制度変化の理由はほぼすべての水利組合でインフラ投資資金を確保するためであることも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で調査地域には二つの水利制度、スワクロラとレランがあること、レランの普及が進んでいること、そしてその理由がインフラ投資資金を確保するためであることがわかった。一方でスワクロラのままインフラ投資資金を確保している組合も存在していることも判明した。今後はレランとスワクロラそれぞれを採用している組合の帳簿や作業記録の比較を通して、どちらがより効果的にインフラ投資資金を集めているか比較したい。
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Causes of Carryover |
ネパールのにおいて農村調査を実施する予定であったが、タライにおいて調査を取りやめた。状況をみながら対応する。また、インドネシア統計局から購入した統計データの不具合について修正を依頼しているところである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ネパールでの状況を見極めながら、調査を実施する。未使用学はその経費に充てることにする。また、インドネシアについては、統計データの利用が可能であるならば、このデータを用いて分析を進める。
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Research Products
(7 results)