2016 Fiscal Year Research-status Report
音響センサによる穀物重量・水分の推定及び収量コンバイン・穀物乾燥機への応用
Project/Area Number |
26450353
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
庄司 浩一 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (10263394)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | イヤホン / 信号処理 / スペクトル / 水分 / 推定 / 誤差 / コンバイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は,コンバイン上での穀粒水分の検出に焦点を絞って実施した。用いた音響センサは,鉄製の衝突板にセラミックイヤホンを接着したものである。昨年度の結果では水分推定には塩ビ板がより適しているとの仮結論を得ていたが,実用化を考えると摩耗しやすい素材は避けるべきと判断した。これを2条刈自脱型コンバインの穀粒タンク内に設置し,縦搬送オーガの羽根から穀粒の一部を受け,信号を記録した。イネおよびコムギについて,異なる穀粒水分が得られるように収穫日を変え,短区間の行程で刈り取り,タンク内に貯留した穀粒水分を行程ごとに測定しつつ,信号を記録する圃場実験を実施した。 信号処理では,昨年はセンサまたは穀粒の固有振動とみられる周波数の相対振幅を用いることで,音響センサを用いた穀粒水分の推定の可能性を見出してはいたものの,大まかな水分が推定できるに留まっていたため,手法を根本的に見直し開発することとした。まず穀粒が通過していると判断される投てきのみを抽出し,投てきごとに高速フーリエ変換を行い,蓄積した音響スペクトルを刈取り行程で平均することでデータセットを作成した。実測した穀粒水分とスペクトルを関連付ける手法として重回帰分析を用い,周波数ごとの振幅を説明変数として穀粒水分の推定を試みた。重回帰に用いるべき周波数を選定する方法として,あらかじめ周波数ごとに振幅と穀粒水分の単相関をとって比較することで,水分推定に有用と見られる周波数の範囲を絞り込んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の手法の特徴である音響スペクトルについては,イヤホンの固有振動によるピークと穀粒の衝突によるピークが明確に現れ,振幅の違いはあるものの,イネ(籾)とコムギ穀粒の衝突によるスペクトルの概形はほぼ同じであることが確認された。安定した穀粒水分の推定のために必要な再現性が担保されていると判断している。 周波数ごとの振幅と穀粒水分の相関については,籾でもコムギでも6 kHz以上において,相関係数は-0.8前後でほぼ一定となっていた。これは含水率が高いほど高周波成分を多く含む衝撃音が鈍くなるというオペレータの感覚と合致している。この結果を受け,6 kHz以上の振幅を平均したものから単回帰で穀粒水分を推定してみると,標準誤差は籾で0.8%,コムギで1.7%(いずれも湿量基準での穀粒水分)となった。この水分推定方法は,結果として海外での先行研究(ただし室内で静置したガラス板にコムギ穀粒を衝突させる)での手法とほぼ類似しているが,推定精度は本研究が優れている。 次に,相関係数の絶対値が大きい周波数をいくつか選び,その振幅を説明変数にして重回帰により穀粒水分を推定したところ,標準誤差は籾で0.4%(2変数),コムギで1.4%(3変数)であった。説明変数を2に限定し,総当りで標準誤差を計算して最適な周波数の組み合わせを調べたところ,標準誤差は籾で0.36%,コムギで0.77%まで抑えることができた。 これらの結果より,低コストで構造が単純な音響センサを搭載し,穀物水分の推定に用いるいくつかの周波数域の信号のみを取り出す回路設計(バンドパスフィルタ)にしておけば,既存の測定法(電気抵抗式,静電容量式など)に匹敵する精度が得られる可能性が示唆された。以上の状況より,当初の計画以上の進展と判断するのが妥当と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記で示したとおり,コンバイン上での穀物水分の推定においては,当初計画以上の結果が得られている。ところが実験を進めるうち,音響センサとして用いるセラミックイヤホンの耐久性に問題があるのではないかとの懸念が出てきたため,同様に安価に入手可能な圧電スピーカに置き換えた実験を行う。また,昨年度に試行しながらまだ十分な結果を得られていない,穀物乾燥機へのイヤホン設置による水分推定についても,本年度の手法の適用ならびに追加実験(圧電スピーカ設置)を予定している。
|
Causes of Carryover |
当初の計画以上の成果が得られ,かつ実用化にむけた性能も確認できているものの,1)センサの耐久性に問題が発見されたので素材を変更して確認実験を行う,2)現時点での成果を国際学会にて発表を行う,3)国際誌への論文投稿を行う必要があるため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験を行うための運搬交通費と若干の消耗品,および成果発表を行うための学会出張費や投稿準備費用を想定している。
|
Research Products
(4 results)