2016 Fiscal Year Research-status Report
野草地の放牧利用はモズの生息状況を向上させるか?-モズを指標とした生物多様性評価
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26450394
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 智伸 東海大学, 農学部, 教授 (70248607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樫村 敦 東海大学, 農学部, 講師 (10587992)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モズ / バッタ目 / 生物多様性 / 半自然草原 / 放牧 / 野鳥 / 食物網 / 野草地 |
Outline of Annual Research Achievements |
東海大学阿蘇キャンパス内のフィールドを試験地として当該研究を遂行してきたが,平成28年4月16日に発生した熊本地震本震によりキャンパスが甚大な被害を受け,当初計画していた野外実験を今年度は行うことができなくなった。また,実験室内での解析実験も野外実験と同様に今年度は遂行不可能となった。併せて,所属機関での震災対応付業務が付加的に発生し,これらの業務を優先せざるを得ず,当該研究に対するエフォートを今年度は確保することができなかった。 このため,今年度においては新たな実験データは得られていない。ただし,モズのはやにえ,植生およびバッタの生息状況などにかかる昨年度までに取得された複数年のデータを総合的に解析した結果,モズのはやにえ行動の季節性ならびに植生とはやにえの質・量との関係をいくらか見出すことができた。前者においては,テリトリー形成に関わる行動が増加する時期,越冬に向けての貯食行動が増加する時期,育雛の時期など,モズの年間の生活周期との関係に加えて,主たる餌資源となるバッタ目の生活史との関係も見出された。後者に関しては,放牧強度が比較的高い利用下で維持されている群落高の低い野草地はモズの餌場として価値が高いことが示唆された。これには餌の発見の容易さや,餌となるバッタ目の質・量が豊富なことが影響しているのではないかと考えられた。 平成29年度は研究計画を遂行できる見込みであり,補助事業期間の延長を申請し,承認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該研究は,モズの生息および餌資源の供給状況を指標として野草地の生物多様性を評価することを目的としている。 今年度は調査地および実験室が熊本地震による影響を受け,野外実験および実験室内での解析も遂行不可能な状況に陥り,申請時の研究実施計画を大きく変更せざる得ない現状にあった。このため,補助事業期間の延長を申請し,今年度予定していた研究計画を次年度(平成29年度)に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本地震による影響により,現地調査をこれまでと同様の頻度で実施することは難しい状況にある。このため可能な範囲で補完データを取得することとし,これまでに既に取得しているデータと併せて分析することで,解析精度の向上を図る。また,3年間の調査データを利用し総合的に次の解析を行う;1)植生とモズの時空間分布との関係,2)地形とモズの時空間分布との関係,3)放牧利用がもたらす植生の変化とモズへの餌資源供給機能との関係。これらの解析結果を基に,モズのハビタット機能に影響を及ぼす主たる要因を抽出する。さらにモズの生息状況を指標として,放牧による野草地の生物多様性の保持機能を評価するための簡便な手法を検討するとともに,野草地の適正な放牧利用管理の方策を考究し提案する。
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Causes of Carryover |
東海大学阿蘇キャンパス内のフィールドを試験地として当該研究を遂行してきたが,平成28年4月16日に発生した熊本地震本震によりキャンパスが甚大な被害を受け,当初計画していた野外実験を今年度は行うことができなくなった。また,実験室内での解析実験も野外実験と同様に今年度は遂行不可能となった。併せて,所属機関での震災対応付業務が付加的に発生し,これらの業務を優先せざるを得ず,当該研究に対するエフォートを今年度は確保することができなかった。このため,直接経費の支出に至るまでの計画を遂行できていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に計画していた内容を次年度(平成29年度)にそのままスライドして実施することを計画している。
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