2015 Fiscal Year Research-status Report
ミツバチのカースト分化および脳機能に関するエピジェネティクス
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26450472
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
佐々木 哲彦 玉川大学, 学術研究所, 教授 (60235257)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / DNAメチル化 / ミツバチ / カースト分化 / 性決定遺伝子 / 選択的スプライシング / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
真社会性昆虫のミツバチの雌は、幼虫期に与えられる餌の違いによって、女王バチと働きバチにカースト分化する。本研究課題は、このカースト分化に性決定遺伝子が関与していることを検証することを目的として計画した。性決定遺伝子は、もともとは雄と雌の分化を制御する遺伝子である。しかし、ミツバチの社会性は、働きバチという産卵機能を喪失した雌の存在によって特徴づけられるものであり、その発生メカニズムに性決定遺伝子が関与している可能性が考えられた。 26年度には、性決定遺伝子の発現カスケードの最下流に位置する遺伝子であるdoublesex遺伝子(dsx)の発現解析を行い、dsx転写産物には2種類のバリアントがあり、2種のバリアントの量比がカースト間で異なることを示唆する結果を得た。 27年度はカースト間で遺伝子発現パターンを網羅的に比較するために、女王バチと働きバチに共通する組織である脂肪体からtoal RNAを抽出して RNAシークエンスを実施した。性決定遺伝子に注目してみると、まずdsxの発現様式が異なることが再確認された。さらにcomplementary sex determination (csd)とtransformer2 (tra2)の発現パターンが異なることが示唆された。cdsはミツバチの性決定カスケードの最上流に位置し、cdsの情報はtra2を介してdsxのスプライシング・パターンを制御することが知られている。これらの結果は、カースト分化に性決定遺伝子が深く関わっていることを強く示唆するものである。 また、遺伝子の機能解析を行うために、CRISPR/Casシステムを利用したミツバチのゲノム編集に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度は、カースト間でメチル化の異なる遺伝子のgene ontology, double sexの発現解析、脳と下咽頭腺でのメチローム解析等、計画していた内容を全て実施した。 27年度は、次世代シークエンシングによるカースト間でのトランスクリムトーム解析を実施し、doublesexのみならず、complementary sex determinationおよびtransformer2の発現様式も女王バチと働きバチで異なることを示唆する結果を得た。本研究課題を計画した段階では、性決定遺伝子が社会性昆虫のカースト分化にも関与している可能性は1つの作業仮説に過ぎなかったが、27年度の結果から、この作業仮説が妥当であったという確証を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、doublesex、complementary sex determination、およびtransformer 2の少なくとも3つの性決定関連遺伝子の発現パターンが女王バチと働きバチで異なることが示唆された。これらの遺伝子について、逆転写定量PCR法を用いて発現量とスプライシングバリアントをカースト間で比較する。カースト特異的な選択的スプライシングが起こっていることが示されると期待される。選択的スプライシングはDNAのメチル化によって調節されている可能性が考えられる。そこで選択的スプライシングが起こる領域について、バイサルファイト・シークエンス法でDNAのメチル化の状態を明らかにする。 また、遺伝子機能解析法を確立するために、CRISPR/Casシステムを利用したミツバチのゲノム編集法の開発を継続する。
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Causes of Carryover |
2015年度末に物品を購入した際に、1375円の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の物品費として使用する。
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