2015 Fiscal Year Research-status Report
囲食膜を標的とした害虫防除技術開発のためのタンパク質フゾリンの効率的利用法の研究
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26450474
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Research Institution | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
Principal Investigator |
三橋 渡 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 昆虫微生物機能研究ユニット, 上級研究員 (00414946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 俊正 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 生体分子研究ユニット, ユニット長 (40360458)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫ポックスウイルス / スピンドル / フゾリン / プロテアーゼ / 囲食膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピンドル投与による囲食膜崩壊のプロセスに、中腸内プロテアーゼが加担しているかどうかを解析するために、スピンドルと同時に、プロテアーゼ阻害剤カクテル(各種プロテアーゼ阻害)またはEDTA(メタロプロテアーゼ阻害)をカイコ3齢幼虫に添食した後、囲食膜の状態を解剖にて観察した。カクテル投与の場合は囲食膜がほぼそのまま残っていたのに対して、EDTA投与では逆に、スピンドル単独投与の場合以上に囲食膜崩壊が進行していた。このことから、プロテアーゼが囲食膜崩壊プロセスの後半で崩壊に関与していることと、フゾリンがメタロプロテアーゼにより分解を受け機能が低下している可能性を見出した。これらの事から、スピンドル(フゾリン)投与による囲食膜崩壊は、以下の様な2段階のステップで生じる可能性が高いと考えられた。第一段階で、スピンドルが溶解して生じたフゾリンが囲食膜に結合・作用し、膜の立体構造が変化するとともに、膜のキチンの酸化分解を起こす。次に、膜立体構造の変化により膜のタンパク質にアクセス可能となったプロテアーゼがタンパク質を分解するために、キチン膜が露出しぜい弱化を進める。これにより、フゾリンのキチンへの結合とその分解が一層進み、大規模な崩壊へといたる。 AcEPVの非宿主昆虫(カイコ、ハスモンヨトウ)の中腸内でのスピンドルの溶解性を解明するために、同幼虫のin vitroにおける消化液中や体内でのスピンドルの溶解性を光学顕微鏡で観察した。その結果、鱗翅目幼虫中腸内ではスピンドルは難溶性であることを見出した。 大腸菌で発現させた活性部位のみのフゾリンをカイコ3齢幼虫に1頭当たり24μg食させた後、カイコNPV感染増進活性を調査したが、カイコNPV感染増進活性はきわめて弱かったことから、糖鎖が付加されない場合は、活性にC末端が必要なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母発現系での発現が確認されていない点は遅延とも考えられるが、囲食膜崩壊のプロセスがかなり明瞭になってきたことや、フゾリンとプロテアーゼの関係についての知見が新たに明らかになった点は進歩と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテアーゼが関わる囲食膜上のタンパク質の同定作業や、高活性フゾリンのデザイン等を行う。フゾリンの量産方法として、植物体(ブロッコリー)での発現を試みる。
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Causes of Carryover |
フゾリンの機能と立体構造の関係に関する詳しい解析を先送りしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フゾリンの機能と立体構造の関係に関する解析
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