2015 Fiscal Year Research-status Report
景観の空間構造と環境異質性がトンボ群集の遺伝的な多様性および連結性に与える影響
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26450485
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
武山 智博 岡山理科大学, 地球環境科学部, 准教授 (70452266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
関島 恒夫 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10300964)
石庭 寛子 国立研究開発法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (00624967)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 景観遺伝学 / トンボ群集 / 環境異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
新潟県佐渡島ではトキの再導入(野生復帰)事業に関連し、トキの生息環境保全の観点から環境保全型農法が導入された稲作が進められている。本研究の目的は、水田に生息するトンボ群集を対象として、種間の移動性や分布を規定する環境要因の違いに着目し、環境保全型農法がトンボ群集に与える効果を景観遺伝学的手法によって明らかにする事である。研究対象種は、分布が比較的広く高い移動性(飛翔力)をもつと考えられるアキアカネとシオヤトンボ、それらとは対照的に分布が限定的で比較的移動性が低いと考えられるキイトトンボおよびハラビロトンボである。
本年度は、昨年度の分布調査の結果に基づいて5-7月に計3回の現地調査を実施し、50の水田を対象として、ラインセンサスによるトンボの生息数調査および局所環境要因(水田の水深や稲丈など)の記録を行った。さらに、GISデータから調査水田の周辺環境データ(景観要因;水田や休耕田の面積、森林までの最近距離など)の抽出を行った。これらのデータに基づき、個体数が少なかったキイトトンボを除く3種について、個体数を規定する局所・環境要因に関する統計解析(一般化線型モデル)を進めた。 その結果、シオヤトンボおよびハラビロトンボでは、周辺の水田や森林が少なく、近隣に休耕田が多い環境で個体数の増加が見られた。一方、アキアカネの個体数は、周辺に水田が多いほど増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に計画していた、研究対象3種の分布に影響を与える環境要因についての解析を終えた。キイトトンボに関しては、天候(小雨)のせいか解析に十分な調査地点数(個体数)が得られなかった。一方で、個体群の遺伝構造解析のためのサンプルの採集に関しては、ほぼ必要数が確保された。
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Strategy for Future Research Activity |
目下、作成と有効性を検証中である遺伝子(マイクロサテライト)マーカーを用いて、集団の遺伝構造の解析を種ごとに進める。さらに、本年度までに得られた結果より、1)種ごとの分布予測モデルの構築とマッピング[種多様性の空間構造]、2)遺伝子マーカーによる種ごとのメタ個体群構造の解明とマッピング[遺伝的多様性の空間構造]、3)環境保全型水田の分布状況(GIS データ)と1)の種多様性および2)の遺伝的多様性のマップを対応させ、環境保全型農法がどの程度トンボ群集の遺伝的多様性に効果を及ぼしているのかを評価する。その上で、メタ個体群構造の分布と景観・局所環境要因データを組み合わせた解析から、遺伝的多様性の地理的不連続性を決定する環境要因の特定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に引き続き遺伝子解析を継続する必要があり、解析に必要な試薬類などを用意するため次年度に一部を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロサテライトマーカーおよび分子生物学的解析に必要な試薬類の購入および、研究取りまとめに関する打合せの旅費などに使用予定である。
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