2016 Fiscal Year Research-status Report
外来種駆除による阿蘇地域の希少な草原性昆虫の保護と種多様性の保全
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26450494
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
村田 浩平 東海大学, 農学部, 教授 (90279381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 守正 東海大学, 理学部, 教授 (00188583)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熊本地震 / オオルリシジミ / 食物網 / 捕食-被食 / セイタカアワダチソウ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,申請書に記載した「セイタカアワダチソウの密度が異なる実験区における昆虫相の調査」や「異なる除去法でセイタカアワダチソウを除去した場合の希少種を含めた昆虫相への影響評価」については,熊本地震により阿蘇校舎,研究設備が大きな被害を受けたため,復旧作業などに多くの労力を要し計画通り研究を遂行できなかった. しかしながら,申請書に記載した「希少な草原性昆虫へのセイタカアワダチソウ駆除策の影響評価」や「草原性の節足動物の捕食-被食関係の解明」や,「阿蘇地域の草原の節足動物間の食物網の作製」については,平成27年度までの研究成果のとりまとめに努力するとともに,継続的な野外調査を実施した.オオルリシジミが生息する阿蘇の草原の管理が節足動物相に及ぼす影響の1部として草原に生息するマダニに関する調査結果をとりまとめて日本蜘蛛学会大会において発表した.また,オオルリシジミの個体数の推移などに関する調査も道路網の寸断など震災の影響の残る困難な状況の中,何とか実施することができた.本調査を実施した結果,熊本地震による熊本県内のオオルリシジミの生息環境への被害状況を調査し,生息地は一部で大きな被害を受けていることが判明した.本調査結果については,日本昆虫学会九州支部会において発表を行うとともに,NHKなどで紹介され,専門学術雑誌においても公表する予定である.また,詳細は学術論文としても報告する予定である. なお,計画通りに研究を遂行できなかった場合の対策としてオオルリシジミをとりまく食物網の数学的解析を進め,本種の絶滅に関するシュミレーション分析の基礎となる成果をEntomological Scienceに論文として公表することができた.オオルリシジミの遺伝子解析による起源に関する共同研究の一部もEntomological Scienceに論文として公表することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熊本地震の発生以降,阿蘇校舎,オオルリシジミの生息地共に甚大な被害を受ける中,オオルリシジミの生息地の被害状況の把握と個体数の推移に関する調査,本種を取り巻く節足動物相に関する調査を実施した.本種の飼育を伴う実験は,実験設備が被災したこと,個体数が激減していることなどから実施できなかった.このため,計画通りに研究を遂行できなかった場合の対策として記述していたオオルリシジミをとりまく食物網の数学的解析を進め,論文として公表した.なお,9月以降,これまでの調査で得られていた資料の整理,復旧と得られていた草原の節足動物相の標本整理,標本の復旧作業を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
熊本地震の直前までに阿蘇地域の生息地は,九州北部豪雨,阿蘇山噴火よる被害をうけており,本種の発生は非常に少ない状況が続いている.したがって,本種を捕獲しての実験は自粛する方向で検討している.実験設備の復旧状況にあわせて可能な実験は実施する予定である.また,本種と随伴アリとの関係の分析に加えて計画書には記載していない本種の生態に関する調査を新たに実施する予定である.さらに,地震前までに得られた標本の整理と資料の取りまとめを継続して学会や専門学術誌に成果を公表する予定である.
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Causes of Carryover |
学会発表の費用が参加日数の短縮により削減できたこと,地震の影響により消耗品の購入を控えたことが次年度使用額が生じた主な要因である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
熊本地震の影響によりオオルリシジミの捕獲を伴う調査およびセイタカアワダチソウの侵入した生息地における野外実験を計画道りに実施することは困難である.従って,本種の随伴アリと幼虫の関係や本種の生態に関する野外調査とこれまでに得た標本の整理に必要な物品の購入および,生息環境の評価に必要な野外測定器の購入を計画している.また,学会発表費用,成果公表のための投稿料や英文校閲費用としても支出する予定である.
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Research Products
(6 results)