2014 Fiscal Year Research-status Report
巨大分泌タンパク質リーリンの新規情報伝達機構と、その病態との関連
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26460073
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
服部 光治 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60272481)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リーリン / プロテアーゼ / 遺伝子改変マウス / 脳 / 神経細胞移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
リーリンは、主に脳の発生において研究されてきた分泌タンパク質である。リーリンは神経細胞膜上にある受容体に結合し、細胞内分子Dab1のリン酸化を誘導する。近年、リーリンが成体脳で機能し、その異常が精神神経疾患に深く関与することが数多く報告されている。我々はリーリンのC末端領域が下Dab1のリン酸化に重要であることを見出した(J. Biol. Chem. 2007)。リーリンC末端領域を欠損するノックインマウスを作製したところ、予想通りこのマウスではDab1リン酸化量が顕著に低下しており、大脳の樹状突起や層構造に異常が観察された(J. Neurosci. 2015)。なぜC末端領域の欠損によりDab1リン酸化量が減るのを解析した結果、C末端領域をもつリーリンだけに結合する膜分子の存在が強く示唆された。現在、この分子の同定と検証を進めている。 一方、リーリンを特異的に分解不活化する酵素の存在は知られていたがその正体は不明であった。この酵素同定に先立ち、まず正確な分解部位を同定し、その周囲のアミノ酸残基が分解に必須であるかどうかを検討した。その結果、特定のプロリン残基に点変異を導入することで「活性持続型」リーリンを作出することに成功した。このリーリンでは活性持続時間が延長していた(J. Biol. Chem. 2014)。よってこの特異的分解がリーリンの機能を負に制御することが証明された。 初代培養神経細胞培養上清からリーリン分解酵素の精製を行い、分泌型メタロプロテアーゼの一種であることを同定した。この酵素を阻害すればリーリンの量や機能が上昇し、精神神経疾患を改善することが期待される。この酵素のノックアウトマウスの胎生期脳ではリーリン分解が顕著に減少し、Dab1リン酸化は上昇していた。よこのノックアウトマウスは生後直後にほぼ死ぬため、現在、条件的ノックアウトマウスの作製を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーリン分解酵素のノックアウトマウスが死んでしまうことが判ったため、条件的遺伝子改変マウスを用いた実験を行っている。この実験はどうしても時間がかかるので、そのぶん計画から遅延している部分がある。それ以外の生化学的、細胞生物学的解析は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
リーリンC末端領域結合分子に関しては候補が得られたので、その検証を行う。最終的には遺伝子改変マウスを用いた解析が必須であるが、その前に生化学的・細胞生物学的解析で充分な証拠収集が必要である。 リーリン分解酵素の条件的ノックアウトマウス(成体)でリーリン機能が上昇しているか、また、それにより精神神経疾患は改善されるのかを検証していく。
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Research Products
(16 results)