2015 Fiscal Year Research-status Report
インターロイキン-33をターゲットとした難治性アトピー疾患の制御に関する研究
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26460108
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
奈邉 健 摂南大学, 薬学部, 教授 (40228078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 裕行 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (90112052)
水谷 暢明 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (90340447)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | IL-33 / 喘息 / アトピー / 制御性T細胞 / 抗アレルギー薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性アトピー疾患において、IL-33は上皮系細胞から産生され病態の形成に関与することが示唆されつつある。したがって、IL-33を産生する細胞やその機序を明らかにすること、さらにIL-33産生を抑制する薬物や方法を探索することは、難治性アトピー疾患に対する新たな治療薬・治療法の開発に繋がる。 平成27年度は、マウス喘息モデルを用い、肺への抗原惹起によるIL-33の産生には、自然免疫性に誘起されている機序と獲得免疫性(アレルギー性)に誘起されている機序が存在することを明らかにした。後者の機序には、肥満細胞・好塩基球を介する機序ならびにTh2細胞を介する機序は関与せず、IgE分子を介した機序が関与することを明らかにした。この機序には、IgEを介した抗原の取り込み機構が関与する可能性を想定し、蛍光ラベル抗原を用いて検討したところ、抗原は、樹状細胞、マクロファージのみならず、B細胞に大量に取り込まれた。 一方、IL-33産生を抑制する方法として、抗原特異的に反応する制御性T細胞(Tr1細胞)を移入することによる治療法の開発の基礎的検討を行った。その結果、感作マウス脾細胞を抗原+種々サイトカインとともに培養することでin vitro誘導したTr1細胞を喘息マウスに移入すると、IL-10が高産生されるとともに、好酸球浸潤30~40%有意に抑制された。 以上の成績は、気道に侵入した抗原が、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞に抗原特異的に取り込まれた後、これらの細胞を活性化し、上皮細胞を活性化させる何らかの分子の産生を誘起するなどの作用を介して上皮細胞からIL-33を産生させている機構の存在が示唆された。これらの知見は、IL-33産生を制御する治療薬や治療法の開発のための基礎データとして極めて有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画では、(1)喘息肺におけるIL-33産生機序を解析すること、(2)IL-33産生抑制薬の効果を検討すること、(3)Tr1細胞の培養方法や効果を基礎的に検討することであった。 これらの計画に対し、(1)IL-33の産生機序に関しては、B細胞をはじめとした細胞がIgEを介して抗原特異的に抗原を細胞内に取り込み、それがトリガーとなって上皮からIL-33が産生される機序が存在することを示唆する成績が得られた。一方、(2)IL-33産生抑制薬の探索に関しては進んでいないが、上記(1)のIL-33産生機序をさらに詳細に明らかにすることができれば、自ずとその候補化合物は絞られることとなる。 (3)Tr1細胞の培養方法や効果に関しては、当初の計画通り、in vivo実験でTr1細胞の効果を明らかにすることができた。しかし、Tr1細胞の養子移入がIL-33産生を抑制するか否かに関しては、未だ検討しておらず、今後行うべきである。 上記(1)および(2)は神戸薬科大学の水谷暢明准教授および徳島大学の福井裕行教授との共同で遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
気道上皮からのアレルギー性のIL-33産生における抗原認識機構を明らかにする。すなわち、B細胞が抗原特異的に抗原を取り込む機序にIgE(および低親和性IgE受容体、CD23)による抗原認識が関わるか否か検討する。また、B細胞と同様に、樹状細胞およびマクロファージに関しても検討する。さらに、B細胞やおよびマクロファージを枯渇した場合にIL-33の産生が影響を受けるか否かについても検討する。また、B細胞、樹状細胞、マクロファージが抗原特異的に抗原を取りこんだ後、どのように上皮細胞を刺激するのかを、TNF-αやIL-1βの産生などに着目して検討を行う。その結果より、TNF-αやIL-1βの産生や作用を阻害する薬物や抗体の処置がIL-33産生に及ぼす影響を検討する。以上の検討により、気道上皮からのアレルギー性のIL-33産生の機序が明らかになり、IL-33産生抑制薬のターゲット細胞や分子が明らかとなることが期待できる。 試験管内で誘導したTr1細胞のアレルギー性気道炎症に対する抑制作用の程度をさらに高くするため、誘導した細胞集団からケモカイン受容体などの発現の有無を利用したセレクションにより、混在すると予想されるTh2細胞などを除去する。また、Tr1細胞のアレルギー抑制作用にIL-33産生抑制が含まれるか否かを検討する。
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Research Products
(17 results)