2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460122
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松浪 勝義 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (70379890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 英昭 安田女子大学, 薬学部, 教授 (00107385)
杉本 幸子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (60549012)
山野 喜 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (70650597)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マダガスカル / 植物成分 / 培養細胞 / リーシュマニア |
Outline of Annual Research Achievements |
マダガスカルはゴンドワナ大陸の遺産などと呼ばれ、天然物化学的に貴重な植物資源の宝庫である。昨年度までに小スケールでの抽出サンプルの調製、フラクションライブラリーの調製をほぼ終えた。分画前の抽出物およびそのフラクションについて、ヒト肺がん培養細胞株A549やリーシュマニア原虫Leishmania majorに対する活性等を比較検討した結果、有意に活性を示すマダガスカル産植物を選定することができた。これらについてはマダガスカルの共同研究者に追加採集を依頼し、順次、大量サンプルの提供を受けることになっている。 現在、比較的早期に入手することができたマダガスカル産ウマノスズクサ科植物の葉部(AA-L)、ニシキギ科植物の葉部(MA-L)、センダン科植物の材部(NM-W)について検討を行っている。それぞれの植物サンプルについてMeOH抽出を行い、MeOHエキスを調製した。このMeOHエキスについて活性試験およびTLC分析を行ったところ、1次スクリーニングで用いたサンプルと比較し再現性が得られたため、次にCHCl3-MeOH溶媒系を用いてSiO2オープンカラムクロマトグラフィーで分画を行った。得られた画分について活性評価を行い、さらにODSオープンカラムクロマトグラフィー, HPLCにより分離精製を行った。その結果、ニシキギ科植物の葉部(MA-L)から既知フェノール性化合物を1種、配糖体を3種得たほか、非常に構造的に興味が持たれる新規含窒素セスキテルペン化合物を2種得ることができた。また、センダン科植物の材部(NM-W)からは既知化合物3種のほか、非常に複雑な構造の新規リモノイド化合物を2種得ることができた。現在、立体化学や、生物活性について検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マダガスカル産植物の少量多種類のサンプルの収集、および、フラクションライブラリーの調製、各種活性試験での生物活性の検討をほぼ終えている。その結果、オリジナルのMeOH抽出物に比べて、フラクションライブラリーとして分画したほうが活性の検出頻度が高く、貴重な資源を見落とさないといった点で有効性を確認することができた。現在は、比較的まとまった量の植物材料の入手に成功した植物について含有成分の検討を行っている。まず、マダガスカル産ウマノスズクサ科植物の葉部(AA-L)について検討を行った。SiO2カラムの分画のうちCHCl3:MeOH=10:1の画分などに活性が見られたため、さらにODSオープンカラム、HPLCで分離・精製を検討した。しかし、この植物サンプルに関しては、含有成分が多様性に富むためか、まとまった量の化合物を単離するには至らなかった。これらについては、今後、活性試験を行い、どのHPLCピークに活性があるか検討し、追加採集ができた際に参考となるデータを得る予定である。一方、ニシキギ科植物の葉部(MA-L)についても同様にSiO2カラムで分画したところ、CHCl3やCHCl3:MeOH=10:1溶出画分などに活性が見られたため、さらにODSオープンカラム、HPLCで分離・精製を行った。得られた化合物の化学構造については1Dおよび2D-NMR、ESI-MS、IR、UVなどの種々のスペクトルデータを解析することで、その化学構造を検討した。その結果、既知フェノール性化合物を1種、配糖体を3種得たほか、新規含窒素セスキテルペン化合物を2種得ることに成功している。一方、センダン科植物の材部(NM-W)からは既知化合物3種のほか、新規リモノイド化合物を2種得ることができた。現在、立体化学についてNOESYやROESY, 改良Mosher法の適用による絶対配置の決定を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、比較的入手の容易であった3種の植物について検討を行った。そのうち、ウマノスズクサ科植物の葉部(AA-L)にあるように、含有成分の多様性が高い場合、個々の成分の単離量が不十分になるが、マダガスカルという海外の遠隔地にある材料であるため、国内産の植物材料などに比べて再入手まで時間がかかるのが問題点であると考えている。この点に関しては、海外の共同研究者と良好な関係を継続していくことが重要であるため、最終年度である本研究課題の終了後も、継続して科研などの研究資金が途切れないよう努め、共同研究を続けていく必要がある。一方、ニシキギ科植物の葉部(MA-L)、センダン科植物の材部(NM-W)からは、興味ある新規化合物を単離することに成功した。まだ、例数は少ないが、やはり、これまでにない新規な化合物を得るという点でマダガスカル産植物に魅力が感じられる結果となった。単離した化合物については絶対配置を含めた立体化学の検討が必要であるため、今後、NOESYやROESYなどの2D-NMRによる解析やMTPAエステル化による改良Mosher法の適用により立体化学を明らかにしたい。また、いずれの植物も、まだ未解析の画分を残しているため、さらに分離・精製を進め、主要成分の全容を解明する予定である。得られた化合物についてはヒト培養ガン細胞A549や抗リーシュマニア活性試験、さらにはゼブラフィッシュを用いた活性試験を行い、化合物の活性についても言及したい。ここで興味ある活性を示した化合物が得られた際は、遺伝子やタンパクの発現変動について解析を行い、活性メカニズムについてその一端を明らかにしたいと考えている。また、今年度中に得られた研究成果を学会等で発表していく予定である。
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