2016 Fiscal Year Research-status Report
アミロイドβを標的としたアルツハイマー病治療薬の開発
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26460153
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
福原 潔 昭和大学, 薬学部, 教授 (70189968)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)はアミロイドβタンパク質(Aβ)の凝集によって生成する老人斑を病理的特徴とする。Aβにはアミノ酸残基数の違いによりAβ1-40とAβ1-42が存在する。Aβ1-42はAβ1-40よりもC末端にアミノ酸が二残基多く、高い凝集能と神経細胞毒性を有する。Aβによる神経細胞毒性は、凝集過程で発生する活性酸素が要因である。我々はこの毒性発現機構を阻害することでADの進行の抑制が可能と考えた。AβはC末端同士がβシート構造をとって二量体を形成し、それが積み重なることで繊維化が進行することから、C末端のペプチドモチーフはAβへの結合親和性を有していることが予測される。そこで、高い凝集能を有するAβ1-42のC末端ペプチドモチーフにビタミンEの芳香環部分(Tx)を付加させた化合物(TxAβn-42)を設計・合成した。これらの化合物はAβ1-42の凝集および神経細胞毒性に対して抑制効果を示し、特にTxAβ36-42は、Aβ1-42の神経細胞毒性をほぼ完全に阻害した。これらの化合物はADの発症機構を抑制することが明らかとなったが、ADの予防・治療薬として利用するためには血液脳関門への通過を考慮する必要があり、低分子化が望まれる。そこでH28年度はTxに代わってカテコール構造を有するカフェ酸(Ca)をC末端ペプチドモチーフに導入した化合物CaAβn-42を設計・合成した。カテコール構造はAβへの親和性が報告されており、TxAβn-42と比べてより短いC末端ペプチドモチーフでも強力な神経細胞毒性抑制効果が期待される。様々な長さのC末端ペプチドモチーフを有するCaAβn-42を固相合成法で合成し、Aβの凝集に対する阻害効果を検討した。その結果、TxAβ36-42と比べてアミノ酸が二分子短いCaAβ38-42でも非常に強力にAβ1-42の凝集を阻害することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではAβ1-42の凝集過程に作用する新たなAD治療薬の開発を目的として、強力な凝集作用と神経細胞毒性を有するAβ1-42に着目し、C末端のペプチドモチーフにフェノール性抗酸化物質を付加させた化合物を開発する。 H26年度はAβ1-42のC末端モチーフ4種類の合成、および合成したペプチドのN末端にビタミンEの芳香環部分(Tx)を付加させた化合物(TxAβn-42)を合成した。Aβ1-42の凝集に対する阻害効果を解析したところ、TxAβn-42は強力な凝集阻害効果を示した。 H27年度は合成した化合物のAβ1-42による神経細胞毒性に対する抑制効果を検討した。Aβ1-42はヒト神経芽腫細胞SHSY-5Yに対して強力な細胞増殖抑制効果を示す。この系を用いて、Aβ1-42と同時にTxAβ36-42を添加すると、Aβ1-42の神経細胞増殖抑制効果を濃度依存的に阻害した。本化合物はAβ1-42を添加した神経細胞から発生する活性酸素も強力に抑制した。以上の結果より、C末端ペプチドモチーフを有するビタミンE誘導体TxAβ36-42はAβ1-42による神経細胞毒性を凝集阻害作用と抗酸化作用で強力に抑制することが明らかとなった。 H28年度は化合物の低分子化を目的として、カフェ酸(Ca)をC末端ペプチドモチーフに導入した化合物CaAβn-42を設計・合成した。カテコール構造はAβへの親和性が報告されており、TxAβn-42と比べてより短いC末端ペプチドモチーフでも強力な神経細胞毒性抑制効果が期待される。様々な長さのC末端ペプチドモチーフを有するCaAβn-42を固相合成法で合成し、Aβの凝集に対する阻害効果を検討した。その結果、TxAβ36-42と比べてアミノ酸が二分子短いCaAβ38-42でも非常に強力にAβ1-42の凝集を阻害することが明らかとなった。 以上、計画通り研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. アルツハイマー病の予防効果を示すC末端ペプチド誘導体の構造展開を行う。 さらに強力なAβの凝集阻害作用と神経細胞毒性保護作用を有する化合物の開発を目的としてフェノール性抗酸化物質とC末端フラグメントを結ぶ構造をアミドからウレアに変えた化合物の合成を行う。また、C末端ペプチドフラグメントに付加させるフェノール性抗酸化物質の構造についても検討を行う。近年、動脈硬化の発症に酸化LDLのLOX-1との結合が関係し、この結合をカテキン重合体であるプロアントシアニジンが阻害することが報告された。我々は以前、カテキンの立体構造を平面に固定化した化合物がAβの凝集阻害作用と神経細胞毒性保護作用を有することを報告した。そこで、C末端ペプチドフラグメントに付加させるフェノール性抗酸化物質として、低重合プロアントシアニジンの立体構造を平面に固定化した化合物の開発を行う。
2. 神経細胞毒性を強力に阻害した化合物は、アルツハイマー病モデルマウスに投与してNMRメタボローム解析を行い、アルツハイマー病の発症と病態の進行に対する予防と治療効果を明らかにする。申請者は変異型アミロイド前駆蛋白質を発現するトランスジェニックマウスの尿と血清についてNMRメタボローム解析を行い,アルツハイマー病の発症前(4ヶ月齢)と発症前期(10ヶ月齢)、発症後期(15ヶ月齢)にそれぞれ特徴的に変動する代謝物を明らかにした(J. Clin. Biochem. Nutr., 52, 133. 2013)。本研究では同じモデルマウスに化合物を投与してNMRメタボローム解析を行い、病態に特徴的に変動する代謝物を診断バイオマーカーとしてモニタリングすることで、アルツハイマー病の発症予防と病態の進行に対する予防効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
生物実験に必要なアミロイドβをさらに一本購入する予定だったが金額が足りなかったため、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の試薬の購入に使用する。
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[Journal Article] Design, synthesis, and evaluation of Trolox-conjugated amyloid-β C-terminal peptides for therapeutic intervention in an in vitro model of Alzheimer's disease2016
Author(s)
T. Arai, A. Ohno, M. Kazunori, T. Kakizawa, H. Kuwata, T. Ozawa, M. Shibanuma, S. Hara, S. Ishida, M. Kurihara, N. Miyata, H. Nakagawa, K. Fukuhara
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Journal Title
Bioorg. Med. Chem.
Volume: 24
Pages: 4138-4143
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Inhibition of amyloid fibril formation and cytotoxicity by caffeic acid-conjugated amyloid-β C-terminal peptides2016
Author(s)
T. Arai, A. Ohno, K. Mori, H. Kuwata, M.Mizuno, K. Imai, S. Hara, M. Shibanuma, M. Kurihara, N. Miyata, H. Nakagawa, K. Fukuhara
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Journal Title
Bioorg. Med. Chem. Lett.
Volume: 26
Pages: 5468-5471
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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