2014 Fiscal Year Research-status Report
パーフルオロ化合物を対象とした超特異的フルオラスLC計測法の開発と応用研究
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26460182
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 秀幸 福岡大学, 薬学部, 准教授 (20301690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境分析 / フルオラス化学 / パーフルオロ化合物 / PFOA / PFOS / 誘導体化分析 / 分離分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,パーフルオロ化合物の分析にフルオラス分離技術を導入し,超高感度・高選択的なLC計測法の確立を目指すものである。パーフルオロ化合物のモデルとして用いたパーフルオロオクタン酸(PFOA)及びフルオロテロマーアルコール(FTOH)に対する,蛍光並びにMS/MS検出を指向した誘導体化分析を企図している。標準品を用いて十分な分析法バリデーションデータを取得した後,可能な限り簡便な前処理法との組合せで,生体,環境や食品などを対象としたパーフルオロ化合物のモニタリングを行う。研究初年度の平成26年度は,フルオラスLC分析に関する原理確認を含め,以下の項目について研究を計画・実施した。 (1)PFOA及びFTOHsの誘導体化LC-蛍光分析法の開発:PFOAに対してカルボキシ基選択的な,FTOHsに対してアルコール性水酸基選択的な,各蛍光誘導体化試薬を標識し,それぞれに対してのフルオラスLC分析を行った。フルオラス分離技術の導入により,従来の蛍光誘導体化LC分析法では困難な,過剰試薬と誘導体化物との間でベースライン分離を達成することができ,両化合物の高感度分析が可能となった。 (2)PFOA及びFTOHsの誘導体化LC-MS/MS分析法の開発:装置トラブルのために,十分な検討を行うことができず,満足な成果を上げられなかった。 (3)フルオラス誘導体化分析法の適用範囲拡充:上記(2)の項目を実施できなかったため,パーフルオロ化合物を分析対象としてではなく,誘導体化試薬として用いるLC分析法の検討を行った。これまでに開発していたフルオラス誘導体化分析法の適用範囲をペプチドや他の生理活性化合物にまで拡充することができ,今後の新たな展開の筋道を切り開くことに繋がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究項目として,パーフルオロ化合物標品に対する誘導体化LC分析法について,当初,(1)PFOA及びFTOHsの誘導体化LC-蛍光分析法の開発,(2)PFOA及びFTOHsの誘導体化LC-MS/MS分析法の開発,を計画していた。連携研究者からの多大なる協力を得たことで,(1)の内容は極めて良好なペースで進めることができ,十分な成果に繋がった。しかしながら,MS/MS装置のトラブルのために,(2)の内容についての十分な検討時間を設けることができなかった。一方,当初予定していなかった(3)フルオラス誘導体化分析法の適用範囲拡充,に関するいくつかの基礎検討を(2)の代替研究として実施した。 良好な状況と不十分な面が混在しているが,研究経費の執行も遅れていることから,達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目となる平成27年度は,これまでの研究期間と同様,連携研究者の協力を得ながら,これまでの研究成果に基づいて,パーフルオロ化合物標品を用いた誘導体化LC分析法に関する検討を行う。具体的には,以下の研究項目を実施する。 (1)PFOA及びFTOHsの誘導体化LC-MS/MS分析法の開発:PFOAに対してカルボキシ基選択的な,FTOHsに対してアルコール性水酸基選択的な,各MS検出用誘導体化試薬を開発・標識し,それぞれに対してのフルオラスLC-MS/MS分析を行う。フルオラスLC-MS/MS分析では,従来のLC-MS/MS分析では不可避とされるマトリクス効果を回避することもできるので,高い感度・選択性だけでなく,極めて精度の高い測定が可能となる。 (2)誘導体化分析法についてのバリデーションデータの取得:前年度に開発した蛍光誘導体化LC法及び本年度開発予定の誘導体化LC-MS/MS分析法について,試薬の選択を含めた各種条件の最適化を行い,感度や選択性だけでなく,操作性や再現性も比較検討する。これにより,測定試料に応じた様々な方法論を提供することが可能となり,次年度の研究内容についての礎とすることができる。
[連携研究者]巴山忠(福岡大学・薬学部・助教):分析機器の操作,測定データの解析
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Causes of Carryover |
学部保有の共通分析機器であるLC-MS/MS装置にトラブルが発生し,同装置を用いた研究に十分な検討時間を充てることができなかった。未使用額は主に,MS/MS装置を用いる研究に費やす予定だった消耗品費と,その研究成果を議論するために参加予定だった学会への出張旅費や参加費,またそれらの研究成果を投稿するための論文校閲費用及び学会誌投稿料として計上していたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度からの繰越額は,本年度の研究経費と合算して執行する。即ち,物品費として薬品類(試薬や溶媒など),LC部品(カラムや配管など)や消耗器具(プラスチック製品やガラス器具など)に,国内旅費として調査や成果発表のための学会(日本薬学会やクロマトグラフィー科学会を予定)参加旅費に,人件費として英語論文校閲の謝金に,その他として学会誌投稿料や学会参加費に,それぞれ費やす予定である。
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