2015 Fiscal Year Research-status Report
がん悪液質の病態時におけるオピオイドによる鎮痛効果、有害作用の個人差要因の解明
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26460194
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
内藤 隆文 浜松医科大学, 医学部附属病院, 副薬剤部長 (80422749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 純一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (50272539)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | がん悪液質 / オピオイド / オキシコドン / がん性疼痛 / 炎症性サイトカイン / 薬物動態 / 薬物代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん患者を対象に血中の炎症性サイトカイン濃度とオキシコドンおよびその代謝物の血中濃度との関係を評価した。浜松医科大学病院において、がん性疼痛に対し、オキシコドンの服用を開始した47名のがん患者を対象とした。がん悪液質の進行度はGlasgow prognostic score(GPS)を用いて評価した。オキシコドン服用12時間後におけるオキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルフォンおよびノルオキシモルフォンの血中濃度を評価した。血中のIL-6、TNF-αおよびIL-1β濃度はELISA法により測定した。オキシコドンの血中濃度は、GPSの増加に伴い有意に上昇した。一方、ノルオキシコドン、オキシモルフォンおよびノルオキシモルフォンの血中濃度については、GPSとの関係は認められなかった。血中濃度比(ノルオキシコドン/オキシコドン)はGPSの増加に伴い有意に低下したが、血中濃度比(オキシモルフォン/オキシコドン)はGPSの増加に伴う影響は認められなかった。また、IL-6の血中濃度はGPSの増加とともに顕著に上昇したが、TNF-αおよびIL-1βの血中濃度については、GPSとの関係は認められなかった。さらに、血中IL-6濃度はオキシコドンの血中濃度と正の相関、血中濃度比(ノルオキシコドン/オキシコドン)と負の相関を示した。これらの結果から、がん悪液質の病態時では、血中IL-6の濃度上昇によりCYP3Aの代謝低下が起こり、オキシコドンの血中濃度を上昇させた可能性が示された。がん悪液質の病態時において、血中IL-6の濃度上昇が確認され、その濃度上昇とオキシコドンの血中濃度の上昇およびCYP3Aの代謝低下との関連性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、がん悪液質時のオピオイドの薬物動態の変動要因に着目し、がん患者を対象に血中の炎症性サイトカイン濃度とオキシコドンとその代謝物の血中濃度との関係性を評価した。さらに、Glasgow prognostic scoreのほかに臨床症状に基づくがん悪液質の進行度分類に関しても、追加評価を導入している。登録症例に関しては、目標症例数の8割程度に到達しているとともに、平成28年度解析予定の薬物動態や臨床効果に関連する遺伝的要因に関する情報や臨床効果に関する患者情報も集積できており、おおむね順調に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に目標症例数に到達予定であり、患者登録を継続する。平成28年度においては、オピオイド服用患者における薬物動態、中枢性有害作用およびドパミンD2受容体遮断作用に関連する遺伝的要因について炎症性サイトカインの血中動態を含めて解析する。これまでの研究成果により、がん悪液質の発症時には、薬物代謝が低下することが明らかにされているが、チトクロムP450の分子種ごとの違いや遺伝的多様性の影響について明らかにする。加えて、がん悪液質の患者には眠気や傾眠などの中枢性の臨床症状が認められているが、その発現とオピオイドの薬物動態、炎症性サイトカインとの関係についても明らかにする。
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Causes of Carryover |
炎症性サイトカインの外注測定を予定していたが、購入したELISAによる測定を実施したため、予定していた費用が抑えられた。さらに他財源により質量分析計を購入したため、共同機器使用費用が不要となった。一方で、それら費用の一部を悪液質の血中バイオマーカー等の探索のためのプロテオーム解析にあてたものの、次年度使用額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究費については、主に遺伝子解析を重点的に行うため、それに関連した消耗品ならびに薬物濃度測定に必要な消耗品に使用する。その他に情報収集や成果発表のための学会参加、臨床検査項目の外部検査機関への委託費用および学内共同機器の使用料に対して、研究費を使用する。
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